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核融合科学研究所/日本の未来エネルギー1️⃣ 第5代所長 竹入康彦 ⑴ご挨拶 ⑵哲理人Profile No.1 The Man of 120000000℃ 
時代への提言 | 2021.01.27


大型ヘリカル装置(LHD) 容器内*

第一部

エネルギーをどこから? 

知らねばならないことがある

考えねばならないことがある

そして 

私たちは自分たちの手で未来を引き寄せねばならない

2020年は間違いなく世界史に残る年となった。21世紀に入り、使い古されかけていた”想定外”という言葉が示す範囲を更に拡大した感がある。

          所詮、人間の想定する範囲なぞ人間仕様枠相当でしかないのかもしれない。

医療崩壊、経済崩壊…護るべきは いのち であるというご時世に空気、水…同様必須不可欠なものがある。

エネルギーだ。

例えば, 未曾有の世界的災禍となった2020年発生の「COVID-19]新型肺炎…通称新型コロナウイルスを収束させる大きな鍵となるワクチンひとつとりあげても、その製造、輸送は言うに及ばず、注射器/針、消毒綿…を成立させるには関係各分野が稼働してなければスタートがきれない。その稼働の源はエネルギーである。

知らないとは無邪気ではあるが、ある面、罪つくりでもある。

一握りの当代の頭脳集団が私利私欲を捨て人類最先端の知識と先見性を併せて地道な研究生活に人生を賭けている姿はなかなか表には出ない。

ここ岐阜県土岐市に設立されている核融合科学研究所にもその一つである。

是非、まず、知っていただけたら…と願う。

大型ヘリカル装置(LHD) 容器内*

【ご挨拶】

核融合科学研究所 所長 

竹入 康彦 

地球のいのちの源である太陽のエネルギー

夜空に輝く星のエネルギー、

これらはすべて

核融合により生み出されています

138億年前のビッグバンによ り誕生した宇宙で絶え間なく作られている核融合エネルギーをこの地上で実 現できれば、人類は恒久的なエネルギーを得ることができます。

核融合科学研 究所では、地上の太陽である核融合エネルギーの実現を目指して、理学、工学に またがる幅広い学術研究を推進しています。

 

核融合では、水素の同位体の原子核同士が融合して、より重いヘリウムにな るときに発生する大きなエネルギーを利用して発電します。

原料は海水中にほ ぼ無尽蔵に含まれている重水素とリチウムであるため、枯渇する心配はありま せん。また、二酸化炭素を排出しないため、環境に負荷をかけることもなく、安 全性等の点でも優れた特性を有しています。

この夢のような核融合発電を実現 するためには、燃料ガスをイオンと電子がバラバラになったプラズマ状態にし て、1億2,000万度以上の高温度にしなければなりません。

このような高温プ ラズマは通常の容器では保持できないため、磁場の力により容器の壁に触れな いよう真空中に浮かして閉じ込めます。

ところが、これが簡単ではありません。 温度の高くなったプラズマは磁場のカゴから逃げようとして、中心部から周辺 部に至るまで、様々に複雑な振る舞いをします。

大型ヘリカル装置(LHD)*

こうした現象を一つ一つ学術的 に解決しながら、核融合発電の実現を目指してプラズマの温度を高めてきてい ます。

そのためには、実験研究に加えて、スーパーコンピューターを用いた理論・ シミュレーション研究も欠かせません。また、核融合条件を満たしたプラズマを 用いて実際に発電するためには、燃料供給、エネルギー変換、材料開発といった 工学研究や発電所の全体システムの設計研究が必要となります。

大型ヘリカル装置(LHD) 容器内*

 

核融合科学研究所では、ヘリオトロン方式と呼ばれる我が国独自のアイデアに 基づく世界最大級の超伝導装置である大型ヘリカル装置(LHD)を用いて、磁場 閉じ込めによる高温プラズマ研究を行うLHD計画プロジェクトを強力に推進し ています。

そして、理論・シミュレーションによる数値実験炉研究プロジェクト、核 融合発電を行う原型炉に向けた工学設計と要素研究を行う核融合工学研究プロ ジェクトを有機的に連携させながら、ヘリカル型核融合炉の実現へ向けた学術研 究を展開しています。

LHD計画プロジェクトでは、平成29年3月に、格段のプラズ マ性能の向上が見込まれる重水素ガスを用いた実験を開始しました。

これにより、重要な核融合条件の一つである1億2,000万度のイオン温度を達成するなど、研究が大きく進展しています。

本研究所は大学共同利用機関であり、全国の大 学、研究機関の研究者との共同研究により、こうした世界最高水準の研究を推進 しています。また、海外の研究機関との国際共同研究も活発に展開しています。 

制御室*

世界に目を向けると、発展途上国を中心とした爆発的な人口増加と経済発展 により、地球規模でのエネルギー需要は拡大の一途をたどっています。

また、このまま化石燃料を使い続けることによる二酸化炭素の増大と燃料資源の枯も深刻な問題となります。

核融合エネルギーの開発が始まって既に60年以上が 過ぎ、いつまで経っても「夢」のエネルギーとも言われていますが、ITER(イーター)による核融合エネルギーの発生が2035年に計画されるなど、 30年後の原型炉による発電実証が現実的になるところまで、研究が進展してき ました。

本研究所では、併設されている総合研究大学院大学や連携大学院を中 心として、将来の核融合発電を実現する人材の育成にも力を注いでいます。

制御室*

 

核融合科学研究所は令和元年5月29日に創立30周年を迎えました。

これからも世界の核融合研究の先頭に立って、核融合発電の実現へ向けた研究を強 カに推進していきます。

*

どうぞ、世界最先端の研究施設をご覧ください。 

(NIFS 2020−2021 より転載)

*

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

核融合科学研究所についての詳細は

以下からアクセスしてください。

URL : https://www.nifs.ac.jp/

第二部

哲理人 プロファイル 1:

イオン温度1億2,000万度を達成したプラズマの写真*

The Man of 120,000,000℃

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 

核融合科学研究所 所長 竹入康彦


明けない夜はない と言われる。 

確かに 現時点の研究では

太陽が今から約50億年は

持続可能と算出されているならば、

地球号に”朝”と呼ばれる時間帯は

定期的に必ず訪れるのだろう

長いトンネルもいつかは抜けられる と言う。

トンネルの先には光が見えると…

しかしトンネルの入り口に立つ者に

そのトンネルが行き止まりでなく

どれくらい長く続いているのかは

三次元的に構造を測らねばわからない

寺のお堂にぼんやりと灯る灯明…

一段だけでは奥は計りしれないが

二段、三段、と奥に連なる

対の大小の灯明により

幽玄的奥行きを与えながら

その先の仏像まで視線を導く…

”光” は人間に 実在を視覚的に三次元構造化させ得る厚みを与え得る。

そしてまた、実態を分析・把握し、現状を維持管理し、かつ近未来〜半永久的により良い土台を実現させる”想定”を担保させ得る。

源は 叡知 である。

叡知とは光である。

道に立つ己の立ち位置を照らし、足元を照らす導き役であるばかりか、全貌を掴もうとするサーチライトでもある。あらゆる方位方角から問題の根幹や主軸を浮かび上がらせ、先を透視想像できる源である。だからこそ、宇宙にとっての必然ではなく…地球にとっての必然でもなく…はたまた自然にとっての必然でもなく…ただ人類が「人類を続けたい」 という願いを祈るとするならば、”人類にとって必要な”

人類のたったひとつの拠り所である。

Let it be と 宇宙、地球、自然、時間、歴史 … つまり運命とやらに身を任せ委ね、かつての地球史が繰り返してきた「系の誕生、隆盛、滅亡のサイクルに漂う」のも一つの流れである。…実際、いくら抗ったところで この流れを止めたり、いかにしてそこから逃れ得るのかは誰にもわからない。

しかし、光を求め、火を手に入れた人類が、”その先、その先へ”と事象・物事の全体像を捉える次元から多脈的考察へと科学的解明を成し遂げてきた歴史を振り返る時、”人類”という系は「let it beを選択することはない”希望の先を追求する生き物”である」…と考えてもいいのかもしれない。

全ては叡知から始まった。

そして何かを変えるものも叡知である。

それが人類という生命体なのではないだろうか。

このシリーズは、21世紀に生きながら、22世紀以降に生きる未来の人類にとって必要不可欠な”エネルギー”を確保する夢を引き寄せている人々の紹介である。 ”核融合”という新しい分野・産業の確立とその実現。合言葉は「地上に太陽を」。

彼らを哲理人(てつりびと)と呼びたい。

*

竹入康彦氏は核融合科学研究所の構想時から核融合と未来エネルギーに関わり、 2015年より第五代 所長の任に就く。2021年3月をもって6年の任期満了を迎える。

所長とは文字通り核融合科学研究所という組織の長であり、当然のことながら、何が起ころうとも最終的には組織全体の責任を背負わねばならない。こと”核”と言う一言が多種多様な反応を呼び起こす時代において、その重圧たるや尋常でなかったことと思われる。

その竹入康彦所長がある時ふと、こういう言葉を漏らされた…

美しいものには 意味がある

意味があるものは 美しい

と。

大型ヘリカル装置 (LHD) 容器内超*

様々な解釈ができる至言である

美しい とは何か、意味とは何か…という文学、哲学に引き込むテーマでもある。しかし少なくともこうも言えるのではないだろうか。人類の未来のために、その維持存続のために、並外れた知識を余すところなく投下し、体力の限界が問われる研究生活を送ることで貢献しておられる竹入所長を始めとする核融合科学研究所の方々こそ 美しい、と。 美しく、意味がある、と 。

自然溢れる岐阜県土岐市にこのような美しさと意味を兼ね備えたsomethingがあることを私たちは知る努力をしなければならないかもしれない。同じ時空間を生きる同じ人間が未来存続のために秀逸な才能を全て捧げる生きざまをしていることに、今少しの敬意と感謝を捧げる必要もあるのではないかと思う。


この度は 哲理人第一号として 竹入康彦所長を以下、ご紹介させていただきたい。

2012 核融合科学研究所 制御室にて

核融合科学研究所 所長 竹入康彦氏は一言で言うと『いかに凄い』のだろうか?

彼は”負イオン源に基づくNBI開発”の”世界の先駆者”なのである。

ここで少し易しく説明を加える。

プラズマを、少しでも核融合条件に近づけるには、プラズマを強力に加熱してやる必要があります。竹入所長は、プラズマ加熱において本質的な役割を果たす中性粒子ビーム入射器(Neutral Beam Injector:NBI)の開発、それを駆使したLHDプラズマの高イオン温度化に取り組んで来られました。竹入所長の研究業績があって、そこをベースに、LHDは、定常性を備えたヘリカル型としては世界で初めて核融合炉条件の一つである1億2千万度のイオン温度に到達し、世界の大きな注目を集めました。大型の核融合実験装置では、NBIの高エネルギー化の要請に伴い、負イオン(マイナスイオン)源に基づくNBIが必要となります。負イオン源NBIは、ITERに投入されます。今現在、負イオン源に基づくNBIがプラズマ実験で稼働しているのは世界中でLHDのみです。竹入所長は、負イオン源に基づくNBI開発の世界の先駆者なのです。

【補足説明】

負イオン源に基づくNBIですが、過去に量子科学技術研究開発機構那珂核融合研究所のJT-60Uトカマク装置で稼働していた実績があります。故に、負イオン源NBIの稼働実績ベースでは、LHDが世界の唯一例ではなく、世界で2例、即ち、LHDとJT-60Uとなります。しかし何れにせよ、負イオン源に基づくNBIは日本でしか稼働実績がなく、核融合開発における日本の特徴的技術であると言ってよい。

JT-60Uトカマクは2008年に役割を終えました。日欧プロジェクトとしてJT-60SAの建設が進み、間もなくファーストプラズマの点火が予定されています。JT-60SAでも、JT-60Uに引き続き負イオン源NBIは、プラズマ加熱に用いられます。

2001 国際会議 サンフランシスコ 移動中の市電内にて  

竹入康彦所長は1977年京都大学工学部電子工学科に入学、同大学にて博士号を取得、以降、京都大学、 Research Associate,  名古屋大学、 Research Associate など名だたる大学にて研究・教育に携わり、1989年の核融合科学研究所の創設から参画。論文、著作、研究活動は近代日本の行方を左右するものである。

人生を賭け、その才をもって 日本のみならず 世界規模で未来のエネルギーを考えてこられた Top Scientist である。

核融合科学研究所では世界初1億2千万度到達を可能にする機器NBIを作り上げた。研究、実験、開発の期間、睡眠時間はかのナポレオンも真っ青な約2時間程ではなかったかと述懐する。家庭で子供と顔を合わす機会すらない。久しぶりに会った子供の声変わりに「風邪か?」と尋ね、心底呆れ果てられたことすらあったらしい。

大型ヘリカル装置(LHD)*

中性粒入射加熱装置の全景*

竹入康彦所長はご家庭の都合で入学と卒業の学校が一致しない少年期を送っていたそうだ。転校生とは大変なものでまず慣れるのに一学期ほど、徐々にそれぞれの土地の様子がわかり、呑み込め、活動しだす…しかしようやく軌道に乗り始めた頃にまた引っ越し…という生活だったそうな。いわゆる”故郷”というものが固定しにくく、馴染みの環境・人間関係を確保しにくい。しかし逆に新しい環境・人間関係に漕ぎ出せる。

それでも故郷的な感覚を感じる場所は長野県(信州)だそうだ。関東から引っ越ししてきた竹入転校生(中学生)は、当時の関東圏の規則に則り、中学生=丸刈り のいでたちであった。中学生といえども丸刈りルールのない長野県で竹入転校生はひどく目立ち、即刻ついたあだ名は「坊主」。竹入少年は開き直る。どうせあだ名が「坊主」ならば、ずっと「坊主」でいようと丸刈りを以後続行したそうだ。

この2つのエピソードは示唆的である。竹入康彦所長の絶対軸の立て方、丁寧な人間関係、客観性、自己証明、そして要求されたものは呑み込み仕上げる…という片鱗に繋がる気がする。三つ子の魂 百まで とは言い過ぎだろうか。

2012 葉山 サイエンスカフェ講演 質疑応答


仲間を大事にし、チームを組み、能力を出し合い、成果を出す。そしてその成果をさらに大きな目標につなげる。いつの時期でもそのように前進し続けた。

お気に入りの一枚 / 「仲間の笑顔が嬉しい…」

2017 11 24 重水素実験ファーストプラズマ式典 核融合科学研究所 制御室*

核融合は太陽で恒常的に継続している現象、太陽そのものとも言える。即ち、宇宙空間においては既に現象として存在している無理ではない現象である。安全性、実現性、還元性…様々な観点から一番早期に枯渇する化石燃料*の代替となり得る策である。だからこそ2021年以降も核融合研究関係者群はきっと速度を上げて夢を実現化させるに違いない。人類の未来のために。

* 化石燃料 : 化石燃料とは何億年もかかってつくられた有限の資源であり、あと数十年で枯渇すると言われています。先進国の経済や生活は化石エネルギーに依存しており、途上国の経済拡大による年々の消費増加も相まり、その枯渇がさらに早まることは確実です。

2006 LHD制御室 中国研究者と

竹入康彦所長は望む。核融合の”研究”と”実践”の両輪が組み合わさり未来において半永久的核融合エネルギー世界が確立できることを。そのためには核融合が”産業”として成立し得る体制を構築しなければならない。と同時に、その関連人材の確保・養成のために多くの若い学生群がこの分野に興味を持ち、進んできてくれることを。

これは未来に向けて人類がいかに生き延びていくか をも問いかけるテーマである。その問いに一つの解を与えた人物が 竹入康彦核融合科学研究所所長であった。



人生とは、点が結びつき、線となり、面となり、動き出す。幼い時から、若い時から、「面白い」「楽しい」と素直に心躍らせる何かに出会い、触れ、心に、記憶に、ビスを打っていく。きっとどこかで足がかりになる…

そういう想いと温かい眼差しとを胸に 沢山の方々が核融合科学研究所を訪れてくださること、知ってくださること、興味を持ってくださること、そして一緒に考え進んでいってくださること…共に未来を構築していく仲間になること…

そう願う日本が誇る世界的 TOP Scientist 竹入康彦所長がここにいる。


アトムが好きな少年が

高校の教科書で核融合に触れ

大学で電子工学を専攻した青年が

負イオン源を研究

核融合の道に進む

The Man of 120000000 ℃

人生はつながっていく…

京都大学学部時代 没頭した麻雀

※  *印画像は核融合科学研究所に帰属致します。

(文・編集:前澤 祐貴子)

 
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