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『今、国学が呼びかけるもの』シリーズ ⑧ : 「賀茂真淵 女流県門指導の特色」
交流の広場 | 2022.06.14

©︎Y.Maezawa

今、国学が呼びかけるもの』シリーズ

賀茂真淵 女流県門指導の特色

「書簡」「兼題」「たおやめぶり」

真淵の県門(門人)は 多士済々で 本居宣長をはじめ 江戸の橘千蔭、村田春海、遠江の内山真龍や栗田土満ら と 全国に三百四十人余りにのぼった と言われています。また 真淵門流県門の大きな特徴は 諸侯の姫君や後室をはじめとする 数にしてその三分の一を占めた 多くの女流県門の存在です。

これらの女流県門たちを真淵は いかにして 育成・指導したのでしょうか?

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1)「書簡(手紙)」による指導

書簡は 相手に合わせて記述することができます。

江戸の真淵が故郷浜松の女流県門、森繁子(もりしげきこ)に宛てた書簡では、「あなたから依頼されていた仕立て屋にきちんと話しておきました…」といった親しい文面がみられます。真淵の女流県門への書簡には、細やかな心遣い、親切丁寧な指導ぶりにあふれた文面が数多く見られます。親身な書簡指導は、女性の心を魅了したことでしょう。

2)「兼題」による指導 

歌会には、その場で出される「席題」(せきだい)に対し 予め出される「兼題」があります。「兼題」指導の効果としては、示された題について、じっくり古典や歴史を学ぶ機会ができ、本歌などの味わいを深めてから歌会に臨むことで、和歌を鑑賞する能力も高まることがあげられます。

男性が居並ぶ歌会で、兼題による学びをもとに参加することは、女流県門にとって、ひとつの大きな支えになったと思われます。

3)「たおやめぶり」を女流県門に奨める真淵

真淵はその歌論『歌意考』『にいまなび』の中で、「高き直き心を万葉に得て、艶(にお)へるすがたを古今和歌集の如くよむときは、誠に女のよろしき歌とすべし」と述べています。

万葉集の歌風「ますらおぶり」を理想とした真淵が、あえて 女流県門には、古今集にみられる優美で繊細な歌風「たおやめぶり」をめざす手本とするよう指導・奨励しました。柔軟に現実に即した真淵の一面が感じられます。

©︎Y.Maezawa

多くの女流県門を育てた真淵は、当時としては稀有な存在であり、

真淵の柔軟な姿勢が 広く国学を継承・発展させる素地を形成していきました。

なかでも 油谷 倭文子(しずこ)、鵜殿 余野子(うどの よのこ)、土岐 筑波子(つくばこ) の三人が特に優れ、

県門の三才女」と言われています。

油谷 倭文子(1733~1752年):

江戸京橋の商家伊勢屋油谷平右衛門の娘。利発で美しく、歌才・文才に優れていましたが、二十歳の若さで亡くなりました。

真淵は実の子のように倭文子を可愛がり、長歌「倭文子をかなしめる歌」を詠み、その夭折を悼んでいます。遺稿集『文布(あやぬの)』に、紀行文『伊香保の道ゆきふり』や書簡・歌集が収められています。

鵜殿 余野子(?~1788年):

旗本の家柄に生まれ、漢学者 鵜殿 士寧(しねい)の妹。若くして 紀州徳川家の大奥に仕え、清子 または 瀬川 と呼ばれました。生涯独身で 紀伊家に勤め、大奥年寄りとなり、晩年は出家して 涼月 と号しました。

詠歌や和文の制作に優れた力を発揮し、真淵にして 余野子に心を許していたところがあり、本音を語った手紙を送っています。

土岐 筑波子(生没年 未詳):

旗本 土岐 頼房の妻で 本名 茂子。生没年は未詳ですが、かなり長命であったと伝えられます。

特に 詠歌に優れ、「かぎりなく来れどもおなじ春なればあかぬ心もかはらざりけり」の歌を、真淵は「天暦の頃の女房の口つきおほゆ」と賞賛しました。

※ その他にも 森 繁子(しげきこ)、吉岡(野村)弁子(ともいこ)…等 多くの女性歌人が 真淵のもとで学びます。  

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浜松市立賀茂真淵記念館 

URL: http://www.mabuchi-kinenkan.jp

※ 尚、当シリーズにおきましては、賀茂真淵に関連する資料/画像、及び内容解説に至るまで 浜松市立賀茂真淵記念館(一般社団法人 浜松史蹟調査顕彰会)の許可とご協力のもと、展開させていただく運びとなります。この場をお借り致しまして その多大なるご尽力に感謝申し上げます。

(編集:前澤 祐貴子)

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