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『令和のお屋根替え』シリーズ No.1: 原皮師 檜と生きる 
時代への提言 | 2022.04.22

人の生き様とは…

その存在感に滲み出るものらしい

積み重ねてきた時間が 確実に 人を創る

恐ろしくもあるものだ。

 

令和のお屋根替え』シリーズ

No.1

原皮師  檜と生きる

檜に登る

大空にまっすぐ立つ 

檜に登る

採取した檜皮は下に落とす時にも細心の注意で痛めぬようフラットに落とさなければならない。

存在 と 所作 が 美しい

原皮師(もとかわし)

1300年余の歴史を背負ってきた。

檜に関わり

檜と生きてきた。

檜皮(ひわだ)採取とは 

屋根葺の一種で社寺に多く見られる檜皮葺きに用いられる。

80〜100年以上の檜の立木から樹皮である檜皮を剥ぎ取る技術。

立木の檜は10年ほどで樹皮が形成され、再び採取が可能となる。

そのためには樹皮下の形成層を傷つけない技術が必要で

檜の立木の下部からヘラを入れ、上方にめくり上げる。

高い木では 20m以上 登る。


一本の綱…振り縄と言う

12〜13mはあろうか

両端に 肩幅 40cm、太さ3cmほどの 檜の棒…振り棒

木べら 

腰なた

これが 装備の全て

原皮師(もとかわし)は この出立ちで 檜と関わってきた。

全体重は 足を載せる振り棒にかかる

ちょうど土踏まずあたりで 振り棒を捉まえることになる…

命綱は 自らが檜に巻いた 振り縄しかない

木肌を傷つけないよう 人が 木に寄り添う

赤い薄皮は  まだ生きている部分。

そこをいき残すことで 10年後の再生を可能にする。

大野 浩二

原皮師

2022年の今年で 38年のキャリアとなる。

根本からの ヘラ入れは

そっと

慎重に

丁寧に

10年後を考えて

一枚一枚

整然と

こなす

全て 木べらから手に伝わってくる感触が頼りだ。

少しずつ高くなる高度

振り縄を上に結わえる作業も自身が行う。

当たり前だが 手で体重を上にあげられなければ 高さは稼げない。

檜皮の採取は 立木への負担を考慮して 樹皮の形成期間(4〜7月)を避け、

栄養・水分の流動の少ない7月下旬〜翌4月下旬までの約9ヶ月間に行う。

樹齢80年以上の檜が対象になる。

皮を剥きあげる。

檜皮葺の仕上がりや耐久性は 材料の檜皮に大きく依り、

檜皮採取の技術は 檜皮葺建造物の保存に必須の重要な役割を果たす。

山中深い現場

高い木に登る危険な仕事

日本全国 檜のある所に赴く。

摂取した重量ある檜皮を山裾まで担ぎ降ろす重労働…

男女平等を謳うご時世ではあるが

女性原皮師は現時点ではいない。

檜皮はその耐久性や保存力に非常に優れている。

長時間の作業…

分厚い膝プロテクターが地面にめり込む長い脚の膝を護る。

わく や コロ を使用して  結束の準備。

わく に 皮を並べる。

PPテープで結束。

特注の大切包丁…

南国土佐から取り寄せた。

シャクで長さを測りながら大切包丁で切断。

丸皮 完成。

この一束 75センチ/30キロ を「丸」/1単位として 神社から 購入する。


2代続く兵庫県丹波の原皮師の家業を継ぐ。

父である先代 大野 豊は 厳しかった。

なかなか一人前とは認めてくれない。

同じことの繰り返し…

習うより慣れろ と。

黙々と努めた。

現代の若者はそうはいかない。

後継…

いわゆる後継者育成はこの種の伝統産業に不可欠の課題だ。

数を確保しなければ継続できない。

幼き頃より 馴れ親しんでいたる場合

あるいは

途中から興味を持つ場合 など

この世界に入ってくる者の動機は 様々である。


いずれにしろ 

ひたすら 待つ…

じっと 待つ…

本人が 自ら 「やる」という言葉を 覚悟して言うまで

一言も 口を挟まず

待つ…

息子 大野 隼矢がこの世界に入って 今年で8年目を迎える。

怒鳴りつけなどしない…

背中を見せ

作業を共にやり

見せながら 教える。

かつて苦しんだ若き日の自分を振り返りながら

この先 継ぐべきこの技を 次代に受け渡せる喜びと安堵を噛み締めつつ

自分の全てを 渡し終えることに 勤める。

3代続く 伝統産業同士の付き合いの世界

お互いを知り

お互いが支え合う互助の世界

過去と現在と未来を支える 固い絆のネットワークが土台を支える

山に入る時期は全国行脚の旅ガラス生活…

現地で仮のアパートを借り

食生活はお湯をかけてのインスタント食品…

この職には 適性がいるようだ。

仲間…

一時は業界従事者が少ない存続の危機に見舞われたが 

国の研修制度が発足・充実してきたため 後継者が徐々に育ってきている。

原皮師

大野 浩二

大野檜皮工業(株)代表取締役  (兵庫県丹波市)

選定保存技術保持者 (文化庁認定)

全国社寺等屋根工事技術保存会 会長(約200人/京都:うち原皮師35人)

とにかく かっこいい。

往年のシネマススター彷彿させる出立ちが キマっているのである…

2020年(令和2年)12月

「檜皮採取」は「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」として

ユネスコ無形文化遺産に登録された。

檜皮葺が本格的に行われるようになったのは

 飛鳥時代(593〜709年)頃からではないかと思われる。

飛鳥時代後半、藤原京造営の折に 多量の木材が使用され その製造過程で排出された派生材としての檜皮を上手く活用しようとしたことから 上級建築にも 檜皮で屋根を吹く技法が生まれたようだ。


日本古来の植物性屋根としては檜皮葺の他に 柿葺(こけら)、茅葺などがあり、その造形の優美さや柔らかさが 日本の風土と相まって 先人達の優れた感性が表出する日本独自の芸術作品にまで高められたと言っても過言ではない。

国の重要文化財に指定されている建物4676棟のうち(2014年10月/平成26年 統計)、檜皮葺は824棟。

主なものは 京都 清水寺、長野 善光寺、広島 厳島神社

檜皮剥きをさせていただく神社は 代々の御縁で結びついている。

一度檜皮剥きを行うと その後10年余は 次の檜の成長を待つために空ける。

日本全国のご縁のある場所を10年で一巡するサイクルだ。

次に訪れるまでの檜の成長に阻害ないよう 剥きの厚さや範囲を考慮しながら作業をする。

檜の成長期(4〜7月)剥ぎをしないだけではなく、日陰日向の条件や 敢えて剥ぎの残しを作ったりもする。

自然の成長・治癒・再生を計算に入れた対話を檜とする。

ただ黙々と ひたすらに 一つ一つ

紡ぐ…

きちんと次に繋ぐ。

高い技術の伝承

思いを込めた向き合い方

優れた結果を遺す精神性 

檜のように 雄々しい 生き様…

人は生業で創られていく。

時代はこういう人間を求めている。

誇り が ここにある。

【参考資料】

1)「先人達の屋根技術 〜日本人の感性が生み出した伝統文化」 公益社団法人 全国社寺等屋根工事技術保存会 2021 08

2)「この屋根、何でできている?」 公益社団法人 全国社寺等屋根工事技術保存会 2017 03

(文・写真・編集: 前澤 祐貴子)

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  • 平塚奈美子 : 2023.11.26 8:54 PM

    2023/11/25日吉大社にて
    大野さんのお仕事姿を拝見させて頂いた者です(神奈川在住)
    文中にあったように【とにかくカッカいい!】まさしく職人気質凛々しいお姿にフリーズ!ピンと張りつめた空気感と優しさが周りのスタッフ方々の対応からも感じられ、頭となる方の素晴らしさが隅々まで行き届いているなぁと感激致しました❗

    心が洗われました。元気も頂きました❗心より感謝申し上げます
    大野さんとスタッフの皆々様
    これからもお身体を大切にご自愛くださいませ。

    前澤 祐貴子さん❤️
    素敵な文章と写真ありがとうございます。
    これからも大野さんの記事楽しみに待っています。また後継者息子さんとのコラボ記事もお願いいたします。。

    取り急ぎ乱文失礼致しました。

 
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