交流の広場
老成学研究所 > 時代への提言 > 核融合科学研究所&哲理人シリーズ > 核融合科学研究所/日本の未来エネルギー2️⃣: (1) 安全で環境に優しい新しいエネルギー
《はじめに》
未来社会を持続可能にするためには その重要な条件群の一つであるエネルギーについて考えねばならない。
本シリーズは、老成学研究所が核融合科学研究所と合意の上 ”核融合” という新しいエネルギー確保の道を多様な観点からご紹介・情報発信することを目的としている。
以下、掲載されている写真/画像群については、核融合科学研究所の許諾のもと、核融合科学研究所管理下の写真/画像群を*印を付して使用させていただいていることを予めお断りさせていただきたい。
No.2
〈第1部〉
安全で環境に優しい新しいエネルギー
* 制御室 入り口
* 制御室内
A SUN ON THE EARTH
The National Institute for Fusion Science carries out research
for the purpose of creating a sun on the earth
by means of the heliotron system,
which has been uniquely developed in Japan,
in order to produce a new source of energy
that is safe and environmentally friendly.
In this way the institute aspires
to make a large contribution
to the welfare of mankind.
地上の太陽
核総合科学研究所の研究の目的は、
我が国独自のヘリオトロン方式によって
地上の太陽を実現し、
安全で環境に優しい新しいエネルギーを作り出す
ことにあります。
そして
人類の福祉に大きく貢献すること
を目指しています。
※ 上記の文面は 制御室入り口壁に記されています。(書き起こし)
(出典:静岡県浜松土木事務所)
未来のために
誰かのために
いかに役に立つかと
才と人生を投じる
理解と励ましと応援こそ
心にしみる嬉しさとパワーになる
共に築き上げたい
安全で環境に優しい新しいエネルギーとは?
核融合という反応を可能にさせるスタート条件について意識を新たにしてみたい。
プラズマ である。
”プラズマ” とは、原子を構成する「原子核(イオン)と電子」がバラバラになって自由に飛び回っている状態を言います。
『核融合エネルギーを取り出すための核融合反応を起こす』には、『密度が1㎤あたり100兆個以上(ほぼ真空に近く、空気の25万分の1)のプラズマの温度を1億度以上にし、時間にして1秒以上閉じ込める』ことが必須条件です。
これがかなわなければ、そもそも核融合反応は起こりません。
* 大型ヘリカル装置(LHD)
物質の存在の状態とは、固体(第1の状態)、液体(第2の状態)、気体(第3の状態)とプラズマ(第4の状態)に4分類されます。
第4状態にあるプラズマを核融合を起こすレベルに到達させるためには その密度と温度を上記のような状態、すなわち
『1㎤あたり100兆個以上の密度、1億度、1秒以上』で閉じ込めた環境
にしなければ 反応は起きません。
(「未来のエネルギーを創るプラズマ研究」 核融合科学研究所 2020 08 引用)
* 超伝導ヘリカルコイル(LHD真空容器の中)
つまり 核融合反応は 理論的にも、実験検証的にも
「暴走や爆発はしない」
と言えます。
(「未来をつくるエネルギー 核融合」 核融合科学研究所 2019 04 より抜粋)
核融合反応とは これら全ての技術的に高度な必須条件が揃って初めて可能になる反応であり、裏を返せば、一つでも条件が崩れれば、プラズマは消え、瞬時に反応が停止してしまう安全な環境で展開される反応です。
* 核融合科学研究所
岐阜県土岐市に在する 核融合科学研究所は、文部科学省管轄下の大学共同利用機関法人 自然科学研究機構内に属する国立大学の仲間であり、併設される国立大学法人 総合研究大学院大学を中心として未来を担う学生の教育も行っています。
研究プロジェクトは
❶ 世界最大級の大型ヘリカル装置(LHD)を用いた高温プラズマの研究
❷スーパーコンピューターを用いた理論・シミュレーション研究
❸将来のヘリカル方式の核融合炉の設計とその製作に必要な工学研究
の3本柱にあり、これらを通し
核融合科学研究所は 将来の核融合発電の実現 を目指して
プラズマの研究を行っています。
(「未来のエネルギーを創るプラズマ研究」P. 00−01 核融合科学研究所 2020 08 引用)
* 実験棟
実験棟の中には大型ヘリカル装置(LHD)が設置され
真空の大型ヘリカル装置(LHD)内には超伝導ヘリカルコイルがあります。
* 大型ヘリカル装置(LHD)
* 超伝導ヘリカルコイル
真空の大型ヘリカル装置(LHD)内の超断伝導ヘリカルコイルで核融合反応を起こすプラズマがつくられます。
プラズマが真空状態の中でしか作れないため、建設にあたり 溶接などの作業は、優れた技術を持った職人たちによって驚くほど高い精度で行われました。
大型ヘリカル装置(LHD)の真空容器はほとんどステンレスでできています。
※ ヘリカル とは”らせん”を意味します。LHDは装置の中にヘリカルコイルというらせん状のコイルが巻きついているのが特徴です。
(「未来をつくるエネルギー 核融合」P.08、10 核融合科学研究所 2019 04 抜粋)
そんな核融合科学研究所敷地内には下記のように放射線モニタリングシステム(RMSAFE)が設置されています。
* 核融合科学研究所
* 放射線モニタリングシステム(RMSAFE)
放射線観測が常時写真の場所で行われており、数字は現在のデータを示します。核融合科学研究所ホームページ上画面の黄色い丸印をクリックすると10分ごとに更新される”その時”のデータが、いつでもグラフで表示されます。
また核融合科学研究所ホームページでは過去のデータも見ることもできます。
* 敷地境界付近及び敷地内の環境放射線を測定・監視し、測定結果を公開
* 放射線監視装置(モニタリングポスト)
* 毎年、研究所職員全員が参加して、消火器の使用体験や放水実演などを取り入れた防災訓練を実施
その他にも、核融合科学研究所敷地内部においては
安全衛生推進部が設置されており、日常の安全管理、RI管理、排水監視、安全教育、講習会、安全ハンドブックの発行、作業現場巡視などの活動を行なっており、環境の保全、作業安全、実験の安全な遂行に努めています。今後 これらの取り組みを更に強化する方向です。
(「NIFS 2020−2021」P.25ー26 核融合科学研究所 2020 07 引用)
また核融合科学研究所敷地外においては、
土岐市、多治見市の各地点における環境放射線を測定したり下記調査をするなど 過去20年以上にわたり 周辺の環境を常にモニターしています。
・ガラス線量計による土岐/多治見市内の環境放射線量測定
・河川/降水中トリチウム濃度 (土岐/多治見)
・安全監視委員会と核融合科学研究所が合同で行う環境水採水
現在に至るまでの
科学的調査データ結果は
研究所敷地境界部に9箇所、実験棟近傍に5箇所に設置された放射線モニタリングポストからはプラズマ実験を実施した時間帯での放射線量の増加は ない
です。
(「未来のエネルギーを創る プラズマ研究」P.12ー15 核融合科学研究所 2020 08 抜粋)
※ 核融合科学研究所では高温のプラズマについての研究をしており、核融合反応を起こすことを目的とした研究はしておりません。将来の核融合発電の実現を目指して学術的な研究を行っています。原子力発電所で起こしている核分裂反応と核融合反応は全く異なります。
(「未来をつくるエネルギー 核融合」 P.03ー04 核融合科学研究所 2019 04 抜粋)
核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)では2017年から重水素ガスを用いた実験(重水素実験)を開始し、より核融合条件に近い高温・高密度のプラズマの研究を進めています。これは普通の水素ガスより重い重水素ガスを使うと、プラズマの性能が向上するためです。
しかし、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)では、発電実証は行いません。
将来的に核融合発電所は、大型ヘリカル装置(LHD)の研究成果をもとに、海辺に建設されます。
(「未来のエネルギーを創る プラズマ研究」 P.10 核融合科学研究所 2020 08)
* 超伝導ヘリカルコイル
核融合科学研究所は
将来の核融合発電の実現を目指して学術的な研究を行う
文部科学省に属する大学共同利用機関法人 自然科学研究機構です。
地上の太陽 を 創り出す 目的は
海水からエネルギーを取り出すため であり
取り出したエネルギーで 未来の仲間たちと共に生き抜くため です。
周知のように
人類のエネルギー消費量は、世界人口の増加、新興国の経済成長に伴い、急激に増加の一途をたどっており、このままでは、あと数百年で化石燃料等のエネルギー資源が枯渇すると算出されています。
日本は燃料のほぼ全てを輸入しており、近年は新興国での需要増加に伴い、価格は上昇傾向であり、その輸入価格は世界情勢に大きな影響を受けます。
人類の存続を深刻な問題…地球温暖化の進行、海水面の上昇、砂漠化、異常気象の増加、感染症のリスク拡大、農作物適正値の移動 等が脅かしています。
新エネルギーの到来、環境負荷の少ない新エネルギーが求められています。
大規模発電が難しい太陽光発電や風力発電、燃料の水素を作るエネルギー源が必要な燃料電池、地熱エネルギー等の自然エネルギーだけでは産業や都市機能維持はなかなか困難であろうと見込まれます。
以上の背景下、
核融合発電を基幹エネルギーとし、
地域性、環境性を配慮した、バランスのとれたエネルギー源の組み合わせが必要
ではないかと思われます。
(「未来のエネルギーを創る プラズマ研究」 P.02ー04 核融合研究所 2020 08 引用
「未来をつくるエネルギー 核融合」 P.01ー02 核融合科学研究所 2019 04 引用)
海
太陽
大地
人
智で
結びつく
* より詳しい情報に関しましては、是非 下記『核融合科学研究所ホームページ』をご覧ください。
URL : https://www.nifs.ac.jp/
(文・写真・編集:前澤 祐貴子)