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核融合科学研究所 2️⃣:(2)哲理人 Profile No.2 磯部光孝 核融合科学研究所 ヘリカル研究部高温プラズマ物理研究系 教授
交流の広場 | 2021.03.05

《はじめに》

未来社会を持続可能にするためには その重要な条件群の一つであるエネルギーについて考えねばならない。

本シリーズは、老成学研究所が核融合科学研究所と合意の上 ”核融合” という新しいエネルギー確保の道を多様な観点からご紹介・情報発信することを目的としている。

以下、掲載されている写真/画像群については、核融合科学研究所の許諾のもと、核融合科学研究所管理下の写真/画像群を*印を付して使用させていただいていることを予めお断りさせていただきたい。

No.2

〈第2部〉

哲理人 : Profile 2

物の理に人生を賭ける男

核融合科学研究所 ヘリカル研究部 高温プラズマ物理研究系 教授

総合研究大学院大学 物理科学研究科 核融合科学専攻 教授

磯部 光孝

              

* 超伝導ヘリカルコイル(LHDの真空容器の中)

自分の踏みしめている今と場所…時と空間が…いかなる価値をもっているか

をわかる者は、それを 感謝 という解で解く。

感謝 という解を得られる者は 

全身全霊で貢献する者となる。

それは そもそも その者に備わっている資質、奢りのない人間性、

即ち 徳とでもいうものからくるものかもしれない。

道を追求する者には得てして その徳が備わっている。

中性子放射化箔システムの前で

中国西南物理研究院の教授(左)と

「もう一度生まれ変わっても

同じような人生を歩みたい。」

磯部光孝氏、核融合科学研究所 ヘリカル研究部 高温プラズマ物理研究系 国立大学法人 総合研究大学院大学 物理科学研究科 核融合科学専攻 教授は、少年のような爽やかさでそう言い切った。

自らの来し方の肯定は 端で聞いていても嬉しいものである。

幼き頃より 漠然と 物の理  に憧れを抱いていたそのひとは 物の理を極める物理 という学問に惚れ込んだ人生を追い求め続けている。

* 大型ヘリカル装置(LHD)

磯部教授の専門は、一言で言うならば

「磁場閉じ込め核融合プラズマにおける高エネルギー粒子閉じ込めに関わる研究」

である。


以下、簡単にご自身に解説いただく。


「将来の核融合炉では、重水素(D)‐三重水素(T)核融合反応により生成された高エネルギーアルファ粒子(アルファ粒子:ヘリウムの原子核)がプラズマを自己加熱し、燃焼状態を維持します。

よって、高エネルギー粒子を良好に閉じ込めることができなければ、燃焼状態の維持が困難となり、核融合炉自身が成立する・しないという議論に繋がってしまうほどクリティカルな話になります。

中性子エネルギースペクトロメータ

このことを背景に、現行の核融合プラズマ実験において、大型ヘリカル装置(LHD)のみならず国内外の実験装置においても、高エネルギー粒子閉じ込め研究は最重要課題の一つとして位置付けられており、既存の核融合プラズマ実験装置で高エネルギー粒子を良好に閉じ込められる磁場配位(磁力線のカゴ)を探求し、また、何らかの理由で高エネルギー粒子が損失するようなことがあれば(実際にあります)、その要因の追求と回避策を見つけるための研究を展開しています。

ここから研究はNBIに繋がります。

※ 尚、この研究課題”高エネルギー粒子に関する成果”は「世界初、ヘリカルプラズマにおける高エネルギー粒子の閉じ込めを実証・将来の核融合炉プラズマの持続燃焼に見通し」に纏められ、「ネイチャーフィジックス」のハイライト研究に選出にされました。核融合科学研究所ホームページにて2019年7月プレスリリース記事をご覧ください。

リンク先:   https://www.nifs.ac.jp/press/190719.html

* 中性粒子ビーム入射加熱装置(NBI)

また核融合科学研究所と中国・西南交通大学(成都)が共同プロジェクトとして進める世界初の準軸対称ヘリカル装置CFQSのプロジェクトにも深く関わっています。

2017 07 03 中国 西南交通大学(成都)国際学術交流協定調印式前事前会議

世界初の準軸対称ヘリカル装置CFQSのプロジェクト

※ 準軸対称ヘリカル装置CFQSに関する情報は下記をご参照ください。

リンク先:https://www.nifs.ac.jp/press/170704.html     

『核融合科学研究所が中華人民共和国 西南交通大学と国際学術交流協定を締結 

〜中国初のヘリカル研究開始に向けて〜』


その他、諸々のご縁がありまして、トカマク型装置では、中国科学院プラズマ物理研究所(合肥)、西南物理研究院(成都)、北京大学(北京)、及び 韓国核融合エネルギー研究所(デジョン)、あと最近では、装置サイズ・プラズマ閉じ込め性能においてLHDと双璧をなすドイツの超伝導ヘリカル型装置Wendelstein 7-X(グライフスヴァルト)でも、「高エネルギー粒子」のキーワードの下、共同研究を展開しています。このような国際共同研究の展開も自身のカラーの一つかと思います。

※ 因みに、LHDでは、核融合の本番燃料(DとTの混合ガス)を使用していませんし、今後も使用しません。私の研究における高エネルギー粒子とは、先述のアルファ粒子そのものではなく、アルファ粒子の模擬粒子、具体的には、主として中性粒子ビーム入射(NBI)加熱によりプラズマ中に生成された高エネルギー粒子のことを指します。」

(磯部教授 言)



生まれは1967(昭和42)年。名古屋市生まれ。

幼少期から父親の影響で魚釣りが大好きだった磯部少年が核融合、加速器等というビッグサイエンスを志すようになったのには思い返せば地方国立大学に進学することになったことが遠因だと言う。

高校時代には、「物理」というキーワードに淡い憧れ的なモノを感じているだけだった青年が、大学入試でうまくいかず、1年浪人して再びうまくいかず…2次募集で、福井大学工学部応用物理学科に「拾ってもらった」と述懐する。

その後、修士課程 福井大学 大学院 工学研究科 応用物理学専攻にて、放射線物理・計測、特に線量計開発を研究し、博士後期から総合研究大学院大学 核融合科学専攻へと場所を移し、今に至る。

人の運命とはわからないものである。

第5回プラズマ・核融合に関するASEANスクール及び総合研究大学院大学 冬の学校

2019 Jan. 21−25  マヒドン大学(タイ)において、講師を務める

                       〜 お礼の盾と共に(↑)・ 講義中(↓)〜

ここで大きくアクセルを踏み込み、

自らが泳ぐ世界の次元を変えたきっかけは

「もっと大きな世界がある」

という知的探究、知への憧憬だった。

磯部教授はこう述懐する。

「福井大学入学後、とりあえず目先にある講義の勉強だけをしていました。

配属された研究室では、名古屋大学との共同研究が走っていまして、何度か名古屋大学に来るうちに、これは福井大学(というか地方国立大学と言った方が正しいです)とは、諸々の面でスケールが違うと思うようになりました。

また、修士からは学会に出るようになり、同じ分野の研究でも大変幅が広い・奥が深いと思うようになりました。

今のようにインターネット等で様々な情報が入る時代ではなかったので、福井大学の外との接点は大きな刺激になりました。

そういう中で、学部4年、修士の頃に自身が取り組んでいた研究課題に満足しなくなりました。

もっと広くて大きな世界がある、という感じでしょうか。

ここで言うもっと大きな世界とは、

核融合、加速器、宇宙等のビッグサイエンスのことを指し、

福井大学で学んだ放射線物理・計測の知識が使える場所でもありました。

自身が所属した福井大学大学院工学研究科応用物理学専攻には、当時、高エネルギー物理を専門とする先生、核融合を専門とする先生がいらっしゃって、いろんな研究所・大学を紹介していただき、見学にお邪魔しました。

核融合科学研究所の前身組織の一つである名古屋大学プラズマ研究所のOBの先生から、お前のようなデキの悪い奴は、面倒見の良い先生がいるところじゃないとダメだ と言われ、その流れで、核融合科学研究所を基盤機関とする総合研究大学院大学核融合科学専攻に進学しました。」

(磯部教授 言)

A3 Foresight Program Seminar on Critical Physics Issues Specific to

Steady State Sustainment of High-Performance Plasmas,

July 11-14, 2017, Sapporo, Japan

自身、研究者である磯部教授は、「”研究”ほど楽しい仕事は他に無い」と考えている。『自分で課題設定して、グループ或いはチームで取り組み、データが上がってきて、発表して論文に纏める』という一連のプロセスが楽しい、と。

第12回核融合エネルギー連合講演会 2018 06 27−29, 大津市

加えて、”人とのご縁”をその楽しさに付け加える。研究絡みでなければなかなか会う機会がないであろう海外の人々との接触や今ではほぼほぼ友達のような共同研究者との出会い、沢山の人との関わりが充足しているそうだ。

A3 Foresight Program on Critical Physics Issues to Steady

State Sustainment of High-Performance Plasmas,

May 17-20, 2016, Yinchuan, China


週末の遊びも

「研究所の皆さんと出かけることがほとんど…」

と語る磯部教授は、今から退職後を心配している。

共同研究:北京大学の教授、大学院生、 及び核融合科学研究所の研究グループのメンバーと共に

* 大型ヘリカル実験棟

核融合に関わる研究は、一人ではできない。

多くの人の支えがあって成立する…

* 超伝導ヘリカルコイル(LHDの真空容器の中)

* 制御室

その才能の結集の底には

一人一人の研究者という人間の能力、志のみならず、

深く理解し合う仲間意識が流れている。

極めて人間的な繋がりがこの団体をまとめている。

核融合科学研究所 第5代 竹入康彦所長

「竹入所長については、言葉にできないほどの感謝の気持ちがあります。

私は、研究所着任当時、LHDのサテライト装置としての役割を担った小型のヘリカル装置(CHS)に張り付いて研究をしていました。

2006年8月末にCHSが役割を終え、正直、所内ニート的な感じで、しばらくブラブラしていたところを、「LHDで重水素実験をやるからこっちに来て一緒にやって」ということで、竹入先生に拾ってもらい、その後も今に至るまで使ってもらいました。2010年の話です。

今でも、夜、運動と称して、わざわざ私ごときのオフィスを訪ねて下さったり、

もう言葉にはならないくらい優しくしてもらい、

感謝という言葉以外見つからないです。」

(磯部教授 言)

このような核融合科学研究所に 

さらに多くの核融合研究・産業に志を抱く若者が参画してくれること 

を 総合研究大学院大学物理科学研究科核融合科学専攻広報の責任者でもある

磯部教授は 願っている。

* 制御室

「自分の将来など、いくら読んでも読み切れることはなく、

その時、その時、

自分が面白いと思うことでチャレンジする人がもっと増えれば、

我が国のサイエンスの更なる隆盛に繋がるのかな。」

と。

磯部光孝…物の理に取りつかれた生粋の研究野郎である。

* 超伝導ヘリカルコイル(LHD真空容器の中)

科学は”人”が追求し、成立している。

そして それぞれの”人となり”が科学の深奥へのベクトルを定める。

未来はそんなチャレンジャーが種をまく。

科学はそういう”人”が支え、発展していく。

そんな若き仲間をここで待っている。

* 核融合科学研究所 エントランス


高校から始めたスキー

大学時代はナイタースキー

最近では研究所仲間と近場で楽しむ

* より詳しい情報に関しましては、是非 下記 『核融合科学研究所ホームページ』をご覧ください。

       核融合科学研究所ホームページ : https://www.nifs.ac.jp/


 
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