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意思を持つ乗り物を巡って  福司康子
時代への提言 | 2026.06.13

 

意思を持つ乗り物を巡って

 

福司 康子

静岡大学 電子工学研究所





「ダッシュボード」といえば、車の運転席の前にある内装パネルを思い浮かべる方が多いと思いますが、その語源をご存じでしょうか。馬車の時代、馬が跳ね上げた泥が御者にかかるのを防ぐために取り付けた板が「ダッシュボード」(dash=叩きつける、board=板)です。それがそのまま自動車にも引き継がれました。また、そもそも「car」という言葉はラテン語の馬車(carrus)が語源ですし、エンジン出力を示す単位としての「馬力=horsepower」など、自動車には今も馬の痕跡が残っています。



私が乗馬を始めたのは、車の運転が好きだったことがきっかけでした。「車の原点は馬なのかもしれない」と思い、一度乗ってみることにしたのですが、車との違いは想像以上でした。車は自分の思い通りに動きます。ところが馬は、力で動かそうとすればするほど動かなくなってしまいます。それでも、馬がふっと(私の意図をくみ取ったかのように)駈歩をしてくれる瞬間があります。そのとき、私が動かしたのか、それとも馬が私の心を読み取って動いたのか、ふと考えてしまいます。技術的には私の合図が正しく伝わっただけなのでしょうが。

 


© Yasuko Fukushi
友人所有の馬


車の世界では、AIの進化によって車が自ら判断し動く時代が近づいています。馬に乗るとき同様、私が動かしたのか、それとも車が動いたのか、わからなくなったら・・・と想像してしまいます。それは、私たちが再び「意思を持つ乗り物」と共に生きる時代の訪れなのでしょうか。誰もが高齢になるのは避けられません。それでも、年齢を重ねて自由に移動できる社会になっていくのは素晴らしいことです。馬から車、そしてAIへ。私たちは再び、意思を持つ乗り物と共に生きる時代を迎えるのかもしれません。馬に魅せられてきた私は、最後は翼の生えた白いペガサスに乗り、その意思の赴くままに大空を飛び回りたいものです。






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