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『自然 と 文明』シリーズ: No.2 「メダカの遺伝的多様性と自然保護」 核融合科学研究所 高畑一也
時代への提言 | 2023.07.28

『自然 と 文明』シリーズ

©︎Y.Maezawa

No.2

メダカの遺伝的多様性

自然保護

核融合科学研究所

高畑 一也

私がまだ子供の頃、つまり50年ほど前ですが、メダカはどこにでもいました。小川、池、あるいは水溜りにも。ところが時が経つにつれ、徐々に見かけなくなり、今では特定の場所に行かなければ見られません。野生のメダカは、どうしてこれほどまでに減ってしまったのでしょうか。

©︎高畑一也

メダカの学名は、オリジアス・ラティペス(Oryzias latipes)で、オリジアスは稲のラテン語オリザ(Oryza)に由来しています。メダカはずっと、田んぼで暮らしてきたのです。田植えの頃、田んぼが水で満たされると、そこでメダカは産卵をします。冬になると、田んぼの周りの水路に逃げて、水路の深みや泥の中でじっと過ごします。

このメダカの暮らしぶりが、メダカが減ってしまったことと関係しています。昔の水田は、水路(見た目は小川)と水田の間に高低差がほとんどありませんでした。メダカは、10センチくらいの段差なら飛び上がることができるので、水路と水田を往き来できたのです。ところが、水路がだんだんコンクリート製の用水路になり、その段差のためにメダカは水田に入ることができなくなりました。そして冬になると用水路は干上がり、メダカは生きていくことができなくなったのです。

©︎高畑一也

1999年、環境庁(当時)が、メダカ科を絶滅危惧種(絶滅危惧Ⅱ類、絶滅のおそれが増大している種)に指定しました。身近な生きものだったので、ニュースにも取り上げられ、保護活動も盛んになります。このことが、さらに絶滅を加速する事態を招きます。それが善意の放流です。メダカが減ってしまったから頑張って増やそうと思い、ペットショップで買ってきたメダカを川に放す人が現れたのです。どうしてこれが問題なのでしょうか。

2012年に兵庫県以北の日本海側のメダカが、キタノメダカという新種に分類され、その他のメダカはミナミメダカと呼ばれるようになりました。遺伝子の違いは、人間とチンパンジーくらい違うそうです。さらに遺伝子の調査から、ミナミメダカも9つの型に分類されることが分かっています。元々遠くには行けないメダカですから、地域ごとに進化したものと思われます。どこから運ばれてきたか分からないメダカを放流してしまうと、元々いたメダカと交雑して、そこにいたメダカは種や型としては絶滅したことになるのです。だから放流は絶対にしてはいけません。

©︎Y.Maezawa

メダカとは直接関係ないのですが、似たような事例があるので紹介します。先日、名古屋市長が、凍結されていた「木曽川水系連絡導水路」計画を容認すると発表しました。東海地方には三大河川である揖斐川、長良川、木曽川がありますが、東西に40キロの長いトンネルを掘って、揖斐川上流にある徳山ダムの水を、長良川や木曽川に流す計画があります。この水を名古屋市の工業用水などに使おうとしていますが、異常渇水時に河川環境の改善を図ることも目的のひとつになっています。その中には動植物の保護も謳われています。ここが理解できません。たとえ渇水になっても、生きものは上手く生き延びる術を知っています。逆に別の川の水を流すと、魚なども一緒に流れてきて、それぞれの川が独自に育んできた生態系が撹乱されてしまうかもしれません。

今回はメダカを例にお話ししましたが、兎も角、自然のことは自然に任せるのが一番です。自然に余計な手出しをしないことが肝要かと。

【参考文献
小澤祥司; メダカが消える日、岩波書店(2000)
伊藤達也; 木曽川水系連絡導水路計画の問題点 (2007)、https://www.cbr.mlit.go.jp/kisokaryu/kisosansen-plan/goiken_071009_03.pdf

(編集:前澤 祐貴子)

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