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『いま、核融合は』シリーズ: 「地上に 太陽を つくる 〜核融合発電〜」 その2  竹入康彦 核融合科学研究所 前所長
時代への提言 | 2022.10.17

©︎Y.Maezawa

老成学研究所 連続講座

いま、核融合は

©︎核融合科学研究所

地上に 太陽を つくる 

核融合発電~」

その2

自然科学研究機構(NINS) 核融合科学研究所(NIFS) 前所長 

プラズマ・核融合学会 現会長

竹入康彦

核融合エネルギー とは


はじめに

究極のエネルギー と言われる核融合を 一言で説明するのは容易ではない。

そこからさらに 「核融合発電」まで話を展開するのには 長い道のりが必要である。

そこで、まずは 「核融合って何?」 の質問に応えられるよう、

今回は 核融合エネルギーについての全般的な話 をする。


1. 核融合によるエネルギー発生

すべての原子は プラス(正)の電荷をもった原子核 と その周囲を回るマイナス(負)の電荷をもった電子 により構成されている。

このうち 原子核同士がくっついて(融合して) より大きな原子核になることが 核融合反応 であり、水素やヘリウムなどの軽い原子核が この核融合反応を起こすと、大きなエネルギーが発生する。

原子核は 正の電荷をもった陽子 と 電荷をもたない中性子 から成っており、核融合反応により 陽子と中性子の組み合わせや結合状態が変化する。

図1 (左)核融合 および (右)核分裂によるエネルギー生成の原理 の模式図。

それぞれ 水素の同位体である重水素三重水素核融合反応では ヘリウムの原子核と中性子が生成する(図1 左図)が、この時、反応の前後で 陽子や中性子の合計の粒子数に変化はないが、反応後の合計の質量は 反応前と比べて わずかではあるが 減少する。

いわば 質量がエネルギーに変化したわけで、アインシュタインの特殊相対性理論により示されている 有名な質量(m)とエネルギー(E)の等価性の関係 E=mc2(cは光速)から、この質量減少分がエネルギーとして放出される。

これが 核融合反応によるエネルギー発生の原理 である。

原子核を構成する 陽子と中性子の合計の粒子数 を 質量数 というが、

原子核の内部エネルギーを質量数で除した粒子当たりのエネルギー 対応する原子の重さの関係 を示したのが 

2 である。

図2 原子核の内部エネルギーを 原子核を構成している陽子と中性子の合計粒子数(質量数)で除した 
粒子当たりエネルギー と、対応する原子の重さ の関係。

軽い原子ほど 粒子当たりのエネルギーが高い ことがわかる。

そして、核融合反応により 重い原子になると 粒子当たりのエネルギーが低くなるため、

その差を エネルギーとして放出する。

また、図2の縦軸は 原子核の粒子当たりの質量に相当する と考えることもでき、

水素H(陽子1個)を基準として、下方に向かって水素からの質量不足分(質量欠損)を表している と見ることもできる。

この質量欠損分が エネルギー放出量を示している。

一方、ウランなどの重い原子核が分裂して軽い原子核に変化するときも、反応の前後で合計粒子数に変化はないが 合計質量は減少し(図1 右図)、その分のエネルギーが放出される。

図2より、内部エネルギー的に最も低く安定な原子核は鉄(Fe)であり、それより軽い原子核では核融合により、重い原子核では核分裂によりエネルギーが発生することがわかる。

なお、鉄より重い元素は、中性子星合体や超新星爆発等の際にエネルギーを得て核融合反応により生成される。

太陽が 核融合反応により エネルギーを生成していることは前回述べたが、太陽が石炭の塊であれば 2,000年で燃え尽きてしまうため、そのエネルギー生成原理は化学反応では説明がつかず、長い間 謎であった。

20世紀初頭になって 相対性理論や量子力学が発展することによって、核融合反応 という化学反応とは異なる新しい原理が確立し、太陽や宇宙に輝く星のエネルギー源であることが明らかにされた。

それでは、化学反応と比べて 核融合反応では どれくらい大きなエネルギーが得られるのだろうか。

水素の酸化反応による燃焼では、1molの水素燃料2gから242kJのエネルギー が得られるが、

重水素と三重水素の核融合反応では、1molの重水素・三重水素燃料2.5gから8.5×108kJと、約350万倍のエネルギー が得られる。

このように、核融合反応では 少ない燃料で大きなエネルギーを生成する ことができる。


2. 熱核融合

さて、プラスの電気を帯びた原子核同士が融合するためには、

その電気的な反発力に打ち勝つことのできる 高いエネルギー(速度)でぶつかる必要 がある。

実際の核融合反応は、加速器を用いて 高エネルギーに加速した原子核を衝突させることによって起こすことができる。

しかし、この場合に発生する核融合エネルギーは、加速器の効率を考慮すると、核融合反応を起こすために使ったエネルギーを上回ることができないため、発電などのエネルギー生成システムとしては成立しない。

加速器を利用したシステムでは、少数の粒子(原子核)を加速して、ターゲット(原子核)にぶつけるので、核融合反応の効率が極めて低い。

そこで、粒子(原子核)の数を増やし、

粒子全体の温度を上げることにより 

個々の粒子のエネルギーを上げ、ぶつかる機会を増やしてやれば、

高頻度に 核融合反応が生じ、

得られたエネルギーは 使用したエネルギーを上回って

外部に エネルギーを取り出す ことが可能となる。

このように、核融合反応の対象となる 粒子全体を高温にする熱核融合 により、

燃料粒子を燃やし続けるシステムを実現することが 核融合開発の目標である。



3.宇宙の核融合

それでは、自然界の 宇宙で生ずる核融合 を見てみよう。

138億年前のビッグバンで宇宙は始まったが、30万年もすると 水素やヘリウムが安定に存在するようになり、それが 巨大なガスの塊を形成して 100万年後~10億年後には原子銀河が誕生した。

それらが核融合を起こし、星(恒星)となって輝き、エネルギーを生成するようになって、現在に至っている。

このように、核融合はまさに 宇宙のエネルギー ということができる。

太陽は 比較的質量の小さな恒星だが、その内部では 4個の水素原子核同士が融合してヘリウム原子核に変化する 核融合反応(Proton-Proton反応:P-P反応) が起こっており、46億年前から安定に燃焼し、あと50億年以上燃え続けることができる。

太陽の中心(核)は 温度1,500万度、密度160g/cm3で 2,500億気圧の高温・高圧の状態で  熱核融合 を生じている。

太陽の質量は地球の33万倍、重力は28倍であり、自らの巨大な重力により高温・高圧の燃料粒子を閉じ込めている。

そして、

核融合反応が激しくなると 熱により膨張して 温度が下がり 反応を弱めるように、

反応が弱くなると 重力により収縮して 温度が上がり 反応を強めるように、

自動的に調節して一定の温度・構造を保っている。

水素が燃え尽きると 中心部でヘリウムの核融合反応が始まり、炭素や酸素の原子核ができ、太陽よりも質量の大きい恒星では、この炭素や酸素が さらに核融合反応を起こして より重い原子核が生成され、それが繰り返されるので、重元素の原子核が タマネギ状に作られる(図3)。

図3 質量の大きい恒星において 重元素の原子核がタマネギ状に作られる様子の模式図。


核融合反応により 水素からヘリウムが、次いでヘリウムから炭素や酸素ができ、これらがさらに核融合反応を起こして より重い原子核が 中心部で順次 生成される。

最後に 鉄の原子核が作られると 核融合反応は停止するため、熱による膨張力がなくなり、重力により急速に収縮し、その反動で超新星爆発(重力崩壊)が起こり、重い元素が宇宙空間にばらまかれる(図4)。

図4 おうし座の超新星残骸。


核融合反応により 最後に 鉄の原子核が作られると
核融合反応は停止して、重力崩壊により超新星爆発を起こし、
重い元素が宇宙空間にばらまかれる。

人の体は 炭素や酸素、窒素等から主になっているが、こうした元素を含めて

 宇宙の物質は 核融合により創られた ことがわかる。

このように、恒星や太陽は 核融合反応により 数千万度から数億度熱核融合により 燃えている。

太陽の核融合反応であるP-P反応は 反応率が非常に低いが、160g/cm3という超高密度で 低反応率をカバーしており、極めてゆっくりと燃えている。

従って、重力により超高密度燃料を閉じ込めている 太陽や恒星の熱核融合を そのまま地上で実現することはできない

地上で熱核融合を実現するためには、別の核融合反応 および 別の燃料閉じ込め方法が 必要である。


4.地上の核融合

そこで、地上の核融合では、最も反応率の高い 重水素と三重水素の核融合反応 を利用する。

D(重水素) + T(三重水素)→ He(ヘリウム) + n(中性子)

この反応を利用しても エネルギーを取り出すためには、

燃料粒子密度は1×1014 /cm3(1.7×10-10 g/cm3)程度と かなり低いが、

温度は 1億度以上 が必要であり、

それを実現するための研究開発が これまで進められてきた。

次回は、地上の核融合を実現するために、重力以外の どのような方法で燃料粒子を閉じ込めて、上述の条件を達成するのか について 紹介する。


(編集:前澤 祐貴子)

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