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「発酵」シリーズ:⑴ 日本酒
時代への提言 | 2025.09.16

©︎Y.Maezawa

日本酒の起源は

弥生時代起源説 と 縄文時代起源説など 諸説あるが

約2000年前頃に遡る とされる

©︎浦野合資会社

以降 

計画的酒造りが行われ始めた 奈良時代、

一般の人々にも飲まれるようになった 平安時代、

商業化が進んだ 鎌倉時代、

京都、奈良では数百件の酒屋が栄えた 室町時代、

現代とほぼ同じスタイルの日本酒の製造法が確立された 江戸時代…

と近代に続く

©︎浦野合資会社

江戸時代には

酒造りの専門職集団 杜氏、蔵人が誕生

以来、

神事、お祝い事、儀式、行事など 文化や歴史を育んできた 

國酒(国酒) という文化的な意義 をも担う

©︎浦野合資会社

お米がお酒に変わる不思議な現象

この日本酒…

決して 偶然には できない

©︎浦野合資会社

歴史のどこかで 

誰かが 

必ずや 何段階にも及ぶ繊細な工夫を投じ 

遂に完成した

人が手入れした 文化の集大成 である

©︎浦野合資会社

物の 変容・変質

物質組成の 変化・変遷

あらゆる時空間にて展開している幾多の反応作用群のうち

人間にとって有益なものは 発酵 と称され 

有害なものは 腐敗 と分類される


©︎Y.Maezawa

そもそも 酒税法において 

日本酒 と定義されている清酒 とは 原則

①米、米麹、水を使用

(その他 政令で定める物品を原料として使用)

②米を精米し、麹と酵母を用いて アルコール発酵

③通常 15〜20度程度のアルコール度数

そして

④製造産地は日本国内限定

である と定められている



©︎Y.Maezawa

21世紀前半の現在

日本国内には 約1100〜1600程度の酒蔵(日本酒を製造する蔵元)が存在し、

「日本酒作りの最高責任者で 通常 各酒蔵に一人いる」 とされる杜氏は 

全国で 約1500人程度ではないか と推定されている

(2021年度国税庁データ)

©︎Y.Maezawa
米、麹、水を原料とし
発酵させて造る日本酒

杜氏 が

酒蔵の味を 決める

©︎浦野合資会社

毎年 新たに収穫された酒米と向き合い

何十種類もの同質の味を造り出す…

同じ環境条件は二度とない にも関わらず

絶やすことなく一定量 提供する…

それを可能にするのは 

 と命名される 人そのもの である

「身を投じ 事に仕える生き様」

究極の味を 完成させる

近年 この熟練職人育成には 伝統的修行と現代教育プログラムが併せとられる。

前者においては 数年間酒蔵で働きながら 酒造りの季節的リズム、製造過程を実体験。同時に 師匠、先輩から直接指導を通して 日本酒製造過程で蔵人を率いるに必須の判断力、チームマネジメント、リーダーシップも身につけることが要請される。

一方 後者においては 酒造技能士(国家資格)*取得など 技能聡明をも目指すこととなる。

©︎Y.Maezawa
「菊石」の銘柄で知られる
四郷町の浦野合資会社

愛知県豊田市に

1864年(元治元年)創業、清酒「菊石」を代表銘柄とする

浦野酒造(浦野合資会社)* がある

* 愛知県豊田市四郷町下古屋48

Tel: 0565ー45ー0020

Mail: info@kikuishi.com

営業: 月〜金;10時〜18時、:10時〜15時

©︎Y.Maezawa

浦野醸を預かる 杜氏 

新井康裕 51歳

浦野合資会社 

杜氏* 兼 製造部長

* 酒造りに携わる蔵人(くらびと)たちのトップ、酒の味を決める製造部門の責任者

©︎浦野合資会社

岐阜県各務原市 出身

愛知県豊田市 在住

1973年(昭和48年)11月 誕生

1996年(平成8年) 山梨大学 工学部卒業

大学時代は 微生物の研究

1998年(平成10年) 山梨大学大学院 工学研究科修士課程修了

微生物が酒造りに与える影響の大きさを知って この道を選ぶ

1998年(平成10年) 大手酒造会社 入社

機械に頼らない 昔ながらの酒造りをしたい という思いから転職

2001年(平成13年) 手造りの酒造会社 入社

伝統の手法を守りながらも より美味しい酒を造ることに命をかける 

寡黙なイメージを覆す 新しい杜氏スタイル

©︎浦野合資会社

2006年(平成18年) 浦野酒造 入社

転職をきっかけに 豊田に移住

2008年(平成20年)10月 杜氏

〜 現在に至る

©︎浦野合資会社

©︎浦野合資会社

©︎浦野合資会社

©︎浦野合資会社

©︎浦野合資会社

豊田の地酒

 菊石(きくいし) を背負う

URL: https://www.kikuishi.com

〜浦野合資会社は工程のほとんどが手造り〜

「地域の伝統的な文化 酒造りのことを伝える使命が 杜氏にはある」

浦野合資会社:

1864年(元治元年)三河霊峰 猿投山の天然記念物「菊石」の名を 崇敬する猿投神社より拝受、代表銘柄として 当地に創業。

清酒 菊石は 酒の旨味とやさしい美味しさ、後味の良さが特徴。

現在に至るまで160年余、伝統的な手造りの味を守り、地酒を通じて 地域文化に貢献。

©︎Y.Maezawa

日本酒製造には 大まかに 以下の行程を要する

©︎浦野合資会社

玄米 

精米 

©︎浦野合資会社

洗米 

浸潰 

蒸し 

©︎浦野合資会社

蒸米 

©︎浦野合資会社

製麹

©︎浦野合資会社

① 麹、水

② 酵母

©︎浦野合資会社

もろみ 

上槽 

濾過 

火入れ 

貯蔵 

瓶詰

新米が出回る10月以降の秋から 冬場にかけての

特別な期間*は

* 年間 120日程度:60日x 2回

10月〜12月、1月〜3月

©︎浦野合資会社

深夜作業が多いことから 帰宅も叶わず 

冬の間は 一人 酒蔵に泊まり込む

©︎浦野合資会社

麹の温度調整は 酒造りの工程における重要な要

ほぼ寝ずの番となる

©︎浦野合資会社

毎年 異なる条件を持つ酒米を相手に

その変容過程につきっきり で寄り添う

温度、湿度、各段階各種の細かい反応具合…

その複数の組み合わせが 待ったなしに同時進行する

©︎浦野合資会社

没頭する


これは

代えがたい楽しさでもある

©︎Y.Maezawa

文化の継承は

その場

その人

という単位から 奏でられる

©︎浦野合資会社

地元で 

地のものを 

楽しんでほしい」

新井氏は 明るく 爽やかに 笑う

地域特有の風土が培う 時代を通して織りなされてきた文化の継承


最も深く風土に根付き 

精神の根幹を形成する情感を養う

民度 とでもいうのだろうか

©︎浦野合資会社

酒造りのオフシーズンには 入場無料で酒蔵を開放し もっぱら案内役を務めるなど 

様々な情報発信 や 地域交流の時空間提供 などの活動も開始


近年 

日本酒を取り巻く環境変化は 著しい

©︎国税庁

2024 12 05、

日本の「伝統的酒造り」は 

ユネスコ無形文化遺産 

に登録される

日本酒、焼酎、泡盛、みりん などの「麹菌を使った伝統的な技術」、 

特に 世界的に珍しい技術『並行複発酵*』が評価される。

*米や麦の澱粉を糖に変えつつ、同時に アルコール発酵を行う

認知度アップ、輸出拡大、技術継承の機運の高まりに 期待がかかる

©︎Y.Maezawa


また一方

アルコール飲料の多種化と消費者嗜好の多様化、健康志向、

特に若年層の酒離れ、少子高齢化、コロナ禍による外飲みの減少…など

原因は 様々取り沙汰されるが

近年 日本酒国内消費量は 長期的に減少方向にあることは否めない

参考:  1973年 約170万KL (1970年代ピーク)

   2022年 約41万KL (ピーク時の約1/4)

国税庁 酒レポート(令和6年6月)

 

©︎Y.Maezawa

日本人が刻む時代を

米、

麹、

日本酒も

生きてきた

今までも

これからも

質の高い日本酒を 文化として 鑑み愛でる時代が 到来した

と言えようか

(記: 前澤 祐貴子)

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