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老成学研究所 > 時代への提言 > 『世界一の安全を目指して 〜浜岡原子力発電所〜』シリーズ > 【世界一の安全を目指して 〜浜岡原子力発電所〜】シリーズ No.03 : 「生存への必須ボーダー 縁の下の偉人たち」
人類は歴史を通し学んできた…
自然との対峙
人類は歴史から学んだはずだった
争いの愚かしさ…
人類は歴史と共に成長し蓄積してきたはずだった…
必要不可欠なもの そして それを得るための技と知識
21世紀前半
今も 人類は 歴史途上
その学びの成果…完全なる完熟に 遥かに及んでいない
人類が歴史を紡ぎ続けるに 識るべきことは
未だ 少なくない
そして
その歴史を貫き
人類が 求め続けるもの…
それは エネルギー である
明日の生存のために
いかなる時代でも
エネルギーは 必要不可欠である
シリーズ
No.03
生存への必須ボーダー
縁の下の 偉人たち
静岡県中部 太平洋に突き出した 御前埼灯台に隣接するかのように
中部電力株式会社 浜岡原子力発電所は存在する
「あの事故さえなければ…」
幾多の人が 口にし
心の中で叫んだフレーズは
ここ 浜岡原子力発電所でも 呟かれなかったことは…恐らくなかったであろう
あの事故…
有史に残る 2011 03 11 東日本大震災
そして
その後 津波によって 引き起こされた 福島原子力発電所における
炉心溶融、水素爆発、放射能汚染、避難、除染…
今なお 続き 完全収束の時期が見えない
福島第一原子力発電所事故である
この事故を どう捉えるか
それは 一言では 表せない
無限大の切り口が 今も これからも 拡がる
しかし
原子力発電の専門家集団という立場、
国家運営を左右するエネルギー政策の根幹、社会活動の喉元、住民の安全、未来担保の要 など
多くの大義と使命を請け負い 走り続けてきたプロフェッショナル集団においては
浜岡原子力発電所が当該事故を いかに捉えるか は
あらゆる意味で 人類の これまで と これから をも
示唆する判断となる
「なんとかなる」
は
「なんとかならない」
その言葉の理解は 次の行動に直結する
それは こと エネルギー問題 において
提供する側、消費する側
双方に
責任が試される…
21世紀、近代社会においては
電力は あらゆる動力創出のエネルギー最終置換形態であり
それなくして
あらゆる社会活動は無機能となり
人類の健全な生存すら 危ぶまれるのが 現実である
浜岡原子力発電所の概要は 以下の通りである
1号機 1976 03 運転開始 2009 01 運転終了 廃止措置中
2号機 1978 11 運転開始 2009 01 運転終了 廃止措置中
3号機 1987 08 運転開始
2011 05 日本政府による原子炉停止要請→停止
2015 06 新規制基準への適合性確認審査のため 原子力規制委員会に申請
適合性確認審査中・安全対策実施中
4号機 1993 09 運転開始
2011 05 日本政府による原子炉停止要請→停止
2014 02 新規制基準への適合性確認審査のため 原子力規制委員会に申請
適合性確認審査中・安全対策実施中
5号機 2005 01 運転開始
2011 05 日本政府による原子炉停止要請→停止
適合性確認審査申請準備中・安全対策実施中
2011 05 浜岡原子力発電所 全原子炉 停止…
以降 現在に至るまで 全原子炉は 停止
言うまでもなく
原子力発電は 物質反応であるが
原子力を扱い動かすのは 人間の判断と技術である
人間が 原子力を操る
判断…
2024 12 浜岡原子力発電所は
津波対策として 通算第3回目となる 防波壁約28m まで嵩上げする設計方針を発表した
リスク想定の条件の底を洗う計算にて
万一の確率の累乗リスクにも対処する方策に 舵をきる
判断
この判断の基準と心得は
何に座するのだろうか
浜岡原子力発電所敷地内には
「失敗に学ぶ回廊」
と呼ばれる場が 設けられている
過去に経験した事故から学んだ教訓 と これまでに蓄積してきたノウハウ を
風化させることなく 技術伝承するための研修施設
【AからFに区切られたゾーンに 追加1ゾーンを加えた7ゾーン】
Aゾーン: 失敗事例を学ぶ 約50事例
これまで発生した事故(失敗事例)の実物や模型を 発生状況、原因、対策、当時の新聞記事と共に展示
Bゾーン:失敗事例の解説、
繰り返し発生している失敗事例の原因、対策の変遷についての解説
C ゾーン:設計
発電所施設の改良の変遷、発展経過など 設計に関する情報
Dゾーン:運用
安全文化、情報公開、アクシデントマネジメントなど 発電所運用に関する情報
Eゾーン:品質管理・品質保証
発電所に求められる品質管理・品質保証の成り立ちや企画・規制の歴史
Fゾーン:地域との共生
地域との関わり、歴史
その他:廃止措置、運転年表
廃止措置、核セキュリテイ、原子力安全技術研究所
事故当時 事故に関わったOBからのメッセージコーナー、
失敗から学んだことを議論するスペース 「車座の間」、など
学びを 効率的に一層高める工夫も…
安全に関して 現状レベルにとどまらず
常に 内外の新知見や 職場での「気づき」を取り入れる
原子力安全推進協会(JANSI *)が提示する
国内外の原子力安全に関する 最新の知見・好事例 を取り入れ、
同協会からの評価・提言・勧告を踏まえた 安全向上諸活動に取り組む
*JANSI:Japan Nuclear Safety Institute: 福島第一原発事故以後 日本の原子力業界において、世界最高水準の安全性追求を目的として設立された 事業者から独立した専門家集団で構成される協会
「アドバイザーリー ボード*」 を設置、
社外有識者からの助言・提言 を反映
* 社外有識者の目線で 安全への取り組みをチェックする 社長諮問機関
1.6㎢ 約160万㎡(約50万坪)の敷地内
従業員数 2,810人*は
常日頃から
失敗を 次の改善・改良の布石へと 昇華させる学びを止めない
* 中部電力従業員数 730人、協力会社従業員数 2,080人(2025 06 01時点)
ソフト面でも
現場対応力の強化 のため
たゆまぬ教育・訓練を投下
「対策を有効に機能させるのは
それを扱う 人 である」
との考え方のもと、
事故リスクを限りなく低減させた地震・津波対策や
重大事故対策等の設備面での安全対策の徹底に加え、
対策の有効機能体制・組織を 充実させる
【防災組織:全社の緊急事態対策組織整備】
対策本部設置:本店、発電所 他
・情報収集・共有、災害対策指揮・命令、
・後方支援拠点整備:発電所への物資輸送
初動から事故収束に至る対応能力の向上を継続的に確認・改善する
教育・訓練の充実・強化
①総合訓練:年数回、全対策要員(約600人);総合的対応力向上
②個別訓練:現場訓練と机上図上演習;目的を絞った技能・対応力向上
国内電力等他社や外部専門家の知見を取り入れ
効果的訓練の検討・実施
・シナリオ非開示型図上演習の導入
・総合訓練の客観的評価手法導入
事故発生時 現場における 総力結集
⑴初動対応強化
❶ 24時間365日体制
当直者 5名
夜間休日対応者 4名
確実な初動対応体制
初動対応の遅れは事態を悪化させ、事後の対応が限定される
❷ 現場対応のスペシャリストチーム 新設・増強
緊急時即応班 (ERF : Emergency Response Force)
13名 : 自衛隊経験者含む 2025年1月時点 (チームを増強中 )
緊急時特化のオペレーション能力;
緊急時に 最善の対応策を即断、確実に実施可能な能力が必須
瓦礫処理、可搬型設備の運転 等 多種の現場対応 多能工化要員
⑵手順整備
確実に対応できる手順を整備、
繰り返し訓練にて手順の実効性を確認
⑶資機材の充実
浜岡原子力発電所敷地内に 7日分の水、食料、
その他 放射線測定器、通信設備 等 配備
外部からの支援がなくても 対策要員が活動可能
事故収束に必要な資機材は確保
地元との連携にも 全力で対応
疑問・不安に正面から向きあった
双方向コミュニケーションを通して
幅広い情報共有 と 密接なコミュニケーション を確立・維持
オフサイト(浜岡原子力発電所敷地外)における
仮に たとえ 万一 が重なり、
放射性物質の重大な放出を伴うような原子力災害が発生した場合にも備え、
国・自治体等との連携も強化
〈例〉
・オフサイトセンターでの訓練
・静岡県原子力防災訓練
防災訓練は
オフサイトセンター(静岡県原子力防災センター)が 核となり
住民へ
自衛隊、海上保安庁、警察、消防、報道機関、医療機関の
援助が届く仕組み。
中部電力株式会社は 震災後2016年 浜岡原子力発電所半径31キロ内に含まれる 5市2町(島田市、磐田市、焼津市、藤枝市、袋井市、吉田町、森町)*と静岡県と「県・5市2町の安全協定」を結ぶ。
* PAZ(Precautionary Action Zone)予防的防護措置を準備する区域 約4.3万人とUPZ(Urgent Protective action planning Zone) 約77.5万人の 計約81.7万人が相当 (2023 04 01時点)
その他、
地元の方々のご理解を得る土台、信頼関係樹立のため
密接なコミュニケーション環境を整備
①発電所キャラバン隊
ショッピングセンターなどで 地元の方々との直接意見交換
②訪問対話活動
中部電力の「顔」を見せる活動
③浜岡原子力館*
昭和47年8月設立以来 累積来場者数 約1160万人余。(2023年度末時点)
友人、家族と
原子力発電 にまつわる様々な情報を
見て 触れて 遊んで 学べる 環境を提供
Zone A アトリウム
Zone B ギャラリー
Zone C エネルギー・環境
Zone D 原子力発電所の仕組み;
・中央制御室、浜岡3号機 1/30模型
・実物大防波壁模型(高さ 22m)
・実物大原子炉模型
Zone E 浜岡原子力発電所の安全性向上対策
Zone F 原子燃料サイクル
Zone G プレイランド・ライブラリー
☆ 原子力館内では ユウユウシアターにて 子供向け映画が上映、
展望台からは 太平洋を臨む浜岡原子力発電所のパノラマ全景が見渡せます。
* 入場無料:静岡県 御前崎市 佐倉 5561 Tel: 0537-85-2424
できないことを数え上げるのではなく
できることを積み上げる…
資源のない国
求められる豊かで充実した文化的国民生活
あらゆる分野で右肩上がりに消費される電力
環境問題への取り組み
完全な安全の確保
24時間 365日
ここに 対峙するために 人生を充てる誰かが 今 この瞬間にも いる
とてつもない モチベーションの維持
人類…
人は
現時点での 渾身の知見と努力で
今と未来をつなげる最高最良と思われる策を打つ…しかない…
その使命の道を 踏み分け 歩んでくれている
縁の下の偉人たち、同じ国民がいることに
気づける…のだろうか。
掲載にあたりましては 中部電力株式会社 浜岡原子力発電所に 関連する資料のご提供を含め 多大なるご協力をいただきました。
ここに 改めて 感謝申し上げます。
(編集: 前澤 祐貴子)
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