交流の広場
老成学研究所 > 時代への提言 > 【〈柱時計・オーディオ〉田中コレクション館】シリーズ 田中仁 > 〈柱時計・オーディオ〉田中コレクション館シリーズ 《11》「分身」
何かが終わる
区切りがつく
には
一抹の哀しさと寂しさがつきまとう
それが
愛でたもの…
長らく共にいたもの…
価値と意味を持っていたもの…
そして
自らの心の拠り所であったならば
なおさら…である
田中コレクション館 田中 仁館長、
2025 06 09
79歳の誕生日に
60余年来の 共友たち との別れに踏みだした
自らの死の前に
皆に 新しい場を整えておく決意をした
終活 である
所有する共友たちは
古置時計 約300余台
時代もののオーディオセット群
円盤レコード 約8000枚
全て 約3ヶ月で 新しい行き先に分散させ、
飴色魔法空間であった皆のホームを返却する
と
長年 ご厚意で 場所(ホーム)を無償貸与してくださった たこまん会長に約束した
掛川たこまん本店2階に展開していた飴色魔法空間、
田中コレクション館は 閉館に歩を進めた
2025 08 26
田中コレクション館 完全閉館
約束は守った
この日
骨組みだけが残る大空間に 声がよく響いた
2025年6月から8月までの約3カ月間の閉館作業は 連日 ハードだった
考えることは
残された時間 と 共友たちの行き先の確保
そのことだけが この間 頭を占めた
観測史上 連日 記録を塗り替える猛暑下
共友たちは 譲渡、売却、取置 の3つの運命に振り分けられ
一つまた一つと ホームから姿を消した
約束を守るため 日々 奮闘…
感慨も感傷も 一旦 横に置いた
全てが終わった時
力は 抜けた…かもしれない
毎日 通った道、
毎日 維持管理した空間、
毎日 座った椅子
もうこの秋からは…ない
この間 妻は そっと寄り添い 見守る
夫の年齢
場所はご厚意でお借りしている
膨大な数の コレクション
そろそろ 先の見通しを考える機である と感じていた
と同時に
この生き甲斐がいきなり消えることへの
夫の心の持ちようにも 思いを馳せる…
これから また 最後の新しい形を模索し
そっと添おう と心を配る
終活 とは
生きながら その先にある死を見据え 身辺整理をすることで
自らの足跡を消していく作業ともいえる
「迷惑をかけないように」という合言葉で 自らが生きた証を消していく
自らの足跡とは 無駄…だったのだろうか…
立つ鳥は後を濁さず ばかりなのだろうか…
ものと人の添い方、付き合い方は 多種多様、 それぞれ異なる
しかし
もの が ひと に代わる場合もあるのかもしれない
想いというフィルターをかけると
ものは 人の代替を務める…
さて
今時の 終活ブーム
身辺整理…
立ち止まって考えるテーマもあるかもしれない
朽ちるまで 残存する妙…それも 味わい深いかもしれない
今後
田中コレクション館は
ミニ田中コレクション館として
規模を縮小し 継続することとなった
場所、システムは目下 調整中
特にお気に入りの 古時計 約100台とオーディオは
ミニ田中コレクション館に引き継がれる
全ては 離せなかった…
それでいい…かも
それがいい…かも
田中コレクション館シリーズは 規模を変え 続く…
ただ…
生涯 好きなものは好き!
コレクターは そうやすやすとやめられるものではない
コレクター人生に 終活は 似合わない…かもしれない
古時計愛好会:
会長 田中 仁
浜松市東区小池町2543−4 浜松骨董市場
053−465−3666
(記: 前澤 祐貴子)
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コレクションを処分されたとのこと。よく決断されたと感心いたしました。普通は、遺産として残され、自然に流されて消えていく例が多いのでしょうが、ご自身で始末を付けられるということは、なかなか、できないことと想像いたします。巨大なコレクション、共友と呼んで、生きている友のように付き合われたのですね。お手許に残された厳選品への愛着を、時間ができたら、この老成学研究所にて、ご紹介下さるとよいのかもしれません。田中さんの共友への思い入れが、言葉として永く残されることを期待します。言葉や思いは大きな空間を占拠しませんので。
コレクションはとても人間的な行為だと思います。生き物そのものが、宇宙の大法則に逆らう存在とも言える中で、人はその生きる力を使ってコレクションを目指します。私も、ほんの少し、貝殻の位相幾何学的な美に魅せられて、化石の永続的存在感に魅せられて、コレクションをしました。田中さんのもののような膨大なものではなく、ほんのお印のようなものです。79歳の今もソファーの前のコーヒーテーブルの中に入れてあり、ガラス天板を通して見られるようにしてあります。足をテーブルに乗せて飲むコーヒーは、7つの海と7億年の時を伝える味がします。捨てられません。コレクションの価値は無限です。それはエントロピー増大則に反する秘密の行為なのでしょう。
田中さんのお噂は前から伺っておりました。新たに、ミニコレクション館を開かれるとのこと。お近くになったようで、出かけて行きたいとも思っています。