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『今、国学の呼びかけるもの』シリーズ: 〈21〉「真淵が生きた江戸時代中期」 その4 
時代への提言 | 2025.05.20

©︎Y.Maezawa

真淵が生きた江戸時代中期

その6

宝暦(ほうれき)は 江戸時代中期の元号で 1751年~1764年の期間にあたり、

 50代半ば~60代後半の真淵が 最も活躍した時期です。

©︎Y.Maezawa

なかでも 1763年(宝暦13年) 真淵67歳 の年 。

この年5月25日、34歳の本居宣長が 伊勢参宮に際し 松坂の宿・新上屋に 宿泊していた真淵と 生涯一度限りの対面をしています。あの有名な「松坂の一夜」で  宣長の日記には 次のように記されています。

「廿五日 曇天 嶺松院会也 岡部衛士当所一宿 始メテ対面ス」

(本居宣長全集 第16巻)

このことは 大正時代になって、佐佐木信綱が「松坂の一夜」と題する一文を記し、それが 平易な文章に書き直されて「尋常小学国語読本」に収録されたことから 広く知られるよ うになりました。

「松坂の一夜」はあくまでも逸話であり、その夜の史実をそのまま伝えるものではありません。

©︎Y.Maezawa

1763年(宝暦13年)12月16日付の宣長宛真淵書簡(本居宣長全集 別巻1)などからすると、

この夜 二人の間で話されたことは 次のことになります。

・宣長が真淵に入門したい旨を伝え 内諾されたこと

・『古事記』を研究するためには まず『万葉集』を学ぶことが大切であり、質疑に答えることを真淵が約束したこと

・万葉研究のために「万葉風」の和歌をつくることが大切であり、その添削を 真淵が引き受けたこと

©︎Y.Maezawa

その後、宣長は なかなか万葉調の和歌を詠むことができず 

叱責されることもありましたが、

宣長自身の歩むべく方向を示し 背中を押してくれた真淵が 

かけがいのない師となりました。

©︎Y.Maezawa

1763年(宝暦13年)5月5日生まれには 俳人の小林一茶がいました。

一茶は 北信濃の北国街道の宿場町 柏原(長野県信濃町柏原)に 自作農の子として生まれました。50歳を過ぎて 若い妻を迎 え、次々に子をもうけましたが 相次いで夭折し、妻も30代の若さで亡くなる など…家庭的な幸せには恵まれませんでした。

「名月を取ってくれろとなく子かな」

「雀の子そこのけそこの け御馬が通る」

などの 有名な俳句のある俳諧俳文集 『おらが春』 は、

妻 きく との間に生まれ た 長女 さと の

誕生と死 というドラマを見つめる中から生まれた代表作です。

©︎Y.Maezawa

真淵の直筆の門人簿に記載のある、1728年(享保13年)生まれの平賀源内

 1763年(宝暦13年)頃 最も活躍した一人です。

香川県(讃岐国)志度浦生まれの本草学者・博物学者・戯作者・浄瑠 璃作者ですが、

これ以外でも活躍した多才な人でありました。

1752年(宝暦2年)の長崎留学後、1754年(宝暦4年)に家督を妹婿に譲り、

1756年(宝暦6年)大坂を経て江戸に出府、

本草学者 田村元雄の門に入り、

傍ら 林家に儒学を 国学を真淵に学びました。

©︎賀茂真淵記念館

真淵直筆の門人簿では、本 居宣長の右隣に しっかりと平賀源内の名前が記されています。長崎で入手したエレキテル(静電気発生機)の修理・復元に成功したのは 特に有名です。

(鈴木健一 編『輪切りの江戸文化史』参照)

©︎Y.Maezawa

※より詳細な情報をお求めの方は 

是非 下記 浜松市立賀茂真淵記念館アカウント にアクセスくださいませ。

©︎Y.Maezawa

浜松市立賀茂真淵記念館 

URL: http://www.mabuchi-kinenkan.jp

尚、当シリーズにおきましては、賀茂真淵に関連する資料/画像、及び内容解説に至るまで 浜松市立賀茂真淵記念館(一般社団法人 浜松史蹟調査顕彰会)の許可とご協力のもと、展開させていただいております。

この場をお借り致しまして その多大なるご尽力に感謝申し上げます。


(編集: 前澤 祐貴子)

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