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『今、国学の呼びかけるもの』シリーズ:〈19〉「真淵が生きた江戸時代中期 その2」
時代への提言 | 2024.11.20

©︎Y.Maezawa

真淵が生きた 江戸時代中期

その2

江戸時代以前の読み物は写本によるものでしたが、

江戸時代には 木版印刷が普及したため、

版本(版木で印刷した本) が大量に刷られるようになりました。

版木は 2ページ分(一丁) ごとに彫るため、100ページの本なら 50枚の版木が必要になりました。

1冊の本を作るのにかなりの手間とコストがかかりました。

版本は かなり高価なものだったのです。

©︎Y.Maezawa

版木で印刷された高価な「版本」は、人々に読まれたか?

元禄期(1688~1704年)の16年間では、およそ4800の書物が成立した と言われています。 年平均では 300の書物が成立したことになります。

※上智大学非常勤講師・誠文堂書店店主 橋口 侯之介著『江戸の本屋と本づくり』P271 掲載の統計データを参照

江戸時代前期の文芸作品で、井原西鶴が書いた『好色一代男』は、1682年(天和2年)に 全8巻 が刊行されました。享楽的な上方の町人に生まれた主人公・浮世之介が 7歳から60歳までの浮世の好色を尽くした一代記を描いた作品です。

この『好色一代男』の一冊の当時の価格は、およそ銀1 匁 (もんめ)50文ほどで、今の価値に直すと およそ5700円でした。これがよく売れた というのですから、江戸時代に生きた庶民の 読書欲と識字率の高さをうかがうことができます。

※本の価格は、上智大学非常勤講師・誠文堂書店店主 橋口侯之介著『江戸の本屋と本づくり』P92 掲載の「江戸時代の平均的な金銀銅貨の換算比率表」を参照

出版は 江戸時代を代表するビジネスの一 つ であり、

文化の振興 を支えました。

©︎Y.Maezawa

真淵にも多くの著作がありますが、

中でも『万葉集』の注釈書である『万葉考』は 代表作 と言えるものです。

『万葉集』の巻一・巻二・巻十三・巻十一・巻十二・巻十四を順に、

『万 葉考』の巻一から巻六にあて、『万葉集』の原形としました。

1760年(宝暦10年)10月、真淵64歳の時、

『万葉考』の一巻・二巻・別記の原稿が完成 、

その後およそ8年後の1768年(明和5年)、真淵72歳の時、

この一巻・二巻・別記が『万葉考』の版本として刊行されました。

真淵が亡くなる一年前のことでした。

版本」の出現により、

これまでの一冊借りて来て、一冊写 す という 写本の世界 から、

版木が摩耗するまで 何冊でも刷ることができる

版本の世界 に移行したのです。

これによって、

だれでも、いつでも、どこでも、

文 化に接し、学問研究に参加できるようになりました。

©︎賀茂真淵記念館

©︎賀茂真淵記念館
江戸時代の職人が丁寧に彫り込んだ版木 (賀茂真淵記念館所蔵)】

©︎Y.Maezawa

※より詳細な情報をお求めの方は 

是非 下記 浜松市立賀茂真淵記念館アカウント にアクセスくださいませ。

©︎Y.Maezawa

浜松市立賀茂真淵記念館 

URL: http://www.mabuchi-kinenkan.jp

尚、当シリーズにおきましては、賀茂真淵に関連する資料/画像、及び内容解説に至るまで 浜松市立賀茂真淵記念館(一般社団法人 浜松史蹟調査顕彰会)の許可とご協力のもと、展開させていただく運びとなります。

この場をお借り致しまして その多大なるご尽力に感謝申し上げます。


(編集: 前澤 祐貴子)


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