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老成学研究所 > 時代への提言 > 『自然と文明』シリーズ > 『自然 と 文明』シリーズ : No.4 「人は 何になろうとしているのか」 核融合科学研究所 高畑一也
『自然 と 文明』シリーズ
No. 4
ヒトは
何になろうとしているのか
核融合科学研究所
高畑一也
シリーズ 第4回目の今回は 人間とは 一体どういう動物なのか について
霊長類研究の権威である 山極寿一先生の著書 を参考に
書かせていただきます。
ヒト(人間)を含む霊長類の先祖は 恐竜が絶滅すると 木の上に移動していきました。ところが 木の上は 恐竜の子孫である鳥が 支配していました。
その時の霊長類の先祖は まだ小さな哺乳類だったので 餌の取り合いでは 鳥に負けてしまいます。
そこで 昼に世界で生きる鳥との争いを避けるために 夜に行動していました(夜行性)。原始的な霊長類であるスローロリスが夜行性なのも 納得できます。
その後 霊長類は 体が大きくなるように進化します。大きくなった霊長類は 鳥に対抗できるようになり、昼の世界にも進出してくるのです。
「霊長類は鳥になろうとした哺乳類なんですね。
そして ヒトも そこに含まれる。」
と 山極先生は述べられています。
昼の世界に住む、人間と鳥には大きな共通点があります。それは、目(視覚)と耳(聴覚)で世界を認識しているということです。
鳥は、磁気や紫外線も見えると言われ、人間より優れた視力の持ち主です。一方、犬は、鼻(嗅覚)が優位で、匂いで世界を認識しています。だから視力はあまり良くありません。
ここで 山極先生は 私たちに 大きな問題を突きつけます。
「私が見てきた霊長類は
いずれも広義のジュスチャー、
つまり 視覚的なコミュニケーション手段を
一番大事にしているんです」
「我々 ヒトも、
視覚的コミュニケーションの動物 なんですよ」
「意識しているかどうか はともかく、
表情や抑揚、ちょっとした仕草などの
非言語コミュニケーションも使っています」
と 述べられた上で
メールやSNSなど文字だけのコミュニケーションでは
この 視覚による非言語情報が 欠落してしまう
と指摘します。
(あまり書くとネタバレになるので 是非 本を読んでみてください)
私は 聴覚によるコミュニケーションも大切にしています。
職場内で メールで問い合わせを受け取ると すぐに 電話で回答します。(若い職員はうっとうしいと思っているかもしれませんが…)
声のトーンによって 相手が期待している回答が なんとなく分かります。自分と意見が一致していれば 問題ないことを伝えますし、異なるなら その場で 妥協点を探ることができます。
メールだと 自分の意見を押しつけて 終わりになってしまう気がするからです。
インターネット という 生まれてまだ30年ほどのテクノロジーが
私たちの生活をガラッと変えてしまいました。
メールやSNSを使い、 日々 誰かとコミュニケーションをとっています。
表情の代わりに 顔文字を駆使しながら…
長い進化を経て獲得した 視覚や聴覚によるコミュニケーション能力を
捨ててしまった時
私たちは もう 霊長類とは言えない気がします。
ヒトは 一体
何になろう としているのでしょうか。
参考文献:
山極寿一、鈴木俊貴; 動物たちは何をしゃべっているのか? 集英社(2023)
(編集: 前澤 祐貴子)
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