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老成学研究所 > 時代への提言 > 『自然と文明』シリーズ > 『自然 と 文明』シリーズ: No.3 「外来生物駆除と環境教育」 核融合科学研究所 高畑一也
『自然 と 文明』シリーズ
No. 3
外来生物駆除
と
環境教育
核融合科学研究所
高畑一也
8月30日の朝日新聞の朝刊に 次のような記事が掲載されました。
「外来種駆除、命の大切さどう伝える 大人の向き合い方、配慮を/考える時間きちんと設けて」
かいつまむと 次のような内容です。
多摩川で 生き物観察ガイドをしている川井さんが「本心としては 外来生物の防除作業に 子どもを関わらせたくない」という投稿を SNSにしたところ、大きな反響があった。
川井さんが、外来種のアメリカザリガニを子供たちに見せた時、「こいつらは殺してもよい」、「駆逐してやる」と言って 踏み潰す子供がいた。こうした言動は、小学校低学年に多く見られた。
この記事を読んで、とても心が痛くなりました。
そもそも「殺してもよい」命なんてないのに、子供たちが勘違いをしてしまったのですね。環境教育の難しさを感じます。
私も川井さんと同感で、駆除作業に子供を関わらせることに反対です。駆除される生き物にも大切な命があることを 理解出来るようになるまで 少し待つべきです。
さて、外来生物駆除は どのようにして 始まったのでしょうか。
まず 1993年に発効された国際条約である「生物多様性条約」に 「外来種の侵入を防ぐこと」と「駆除などの対策の必要性」が明記されました。
そして これを批准している日本でも、2004年に「外来生物法」が 成立しました。特に 環境や農林業に影響を与える外来生物を、「特定外来種」に指定して、規制することになりました。規制とは、飼養・栽培・保管・運搬の禁止と防除(予防と駆除)です。
私たちが最も目にした特定外来生物といえば、オオキンケイギクです。北アメリカ原産で、黄色のコスモスと似た綺麗な花を咲かせます。1880年代から観賞用、緑化用に移入され、全国で普通に見られます。
ただ困ったことに、繁殖力が強かったために、下の写真のように 河川敷にオオキンケイギクのお花畑ができてしまいました。すると、そこにいた在来の植物が見られなくなってしまったのです。
特定外来生物に指定されたオオキンケイギクは、早速 駆除されることになります。立派な看板が立てられ、一斉に刈り取られてしまいました。
これが毎年続けられ、オオキンケイギクは、今では ほとんど見られなくなりました。駆除は成功したわけです。
しかし、今でもなお 草刈りは行われているので、在来の植物が復活することはありません。何のための駆除なのか 疑問ですね。
話は元に戻りますが、今でも オオキンケイギクを子供たちと一緒に駆除するイベントが少なからずあるようで、ニュースにもなっています。
その時、スキー場のゲレンデを埋め尽くすキバナコスモス園や、公園のネモフィラ畑との違いを きちんと伝えているのでしょうか。単に 植物に善悪を付けて、駆除してはいないでしょうか。駆除していることを正義にしてはいないでしょうか。とても心配です。
外来生物に関わることは全て、人間の勝手な都合で起こっていること。人間以外の生き物は 何も悪いことをしていないのです。
そのことを ちゃんと 子供たちに伝えないといけない と思います。
参考文献:
朝日新聞朝刊、「外来種駆除、命の大切さどう伝える 大人の向き合い方、配慮を」2023年8月30日版
WWFジャパン;外来生物(外来種)問題(2009)、https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3557.html
(編集:前澤 祐貴子)
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